米金融サービスMSCI、除外アプローチを標準化したESGインデックスシリーズ開発。石炭、タバコ、グローバルコンパクト違反企業等を投資対象外に。日本向けも用意（RIEF）
2018-10-25 00:16:25
米金融サービス大手のMSCIは、石炭やオイルサンド等の採掘、核兵器、タバコなどを投資対象から外す「除外アプローチ」を標準的に用いた「MSCI ESG Screened Indexes」を開発した。ESG投資が広がる中で、より明確なESG投資を打ち出し、サステナビリティ責務を重視する投資家の広がりに対応する形だ。
MSCIの算出するインデックスは、ライセンスを得た各国の金融機関によって、上場投資信託（ETF）が多数作られており、国際的な株式投資におけるベンチマークとして利用されている。今回、「除外アプローチ」を標準化したインデックスが登場することで、ESG資金の流れがより明確になるとの期待もある。
MSCIによると、新インデックスを開発した背景は、機関投資家や富裕投資家などの間で、石炭などの化石燃料向け投資や、社会的に議論を呼ぶ投資先を排除した投資ニーズが高まってきた点があるという。従来ならば、そうした投資家の個別ニーズに対しては、オーダーメードで除外規定を設定するケースが多かった。今回のインデックスは除外規定を標準装備しているため、一般的な機関投資家にとっても採用し易い、としている。http://rief-jp.org/ct6/84029
MSCI ESG Screened Indexesに導入される除外規定の対象は、燃焼用石炭、タールサンド掘削に関連する企業、社会的に議論を呼ぶ核兵器、民間向け銃器、タバコ等からの収入が高い企業、国連のグローバルコンパクトの10原則に抵触する企業等を例示している。石炭やタールサンド、たばこ事業等については、収入の5%以上がそれらの事業から得ている場合を除外対象とする。
開発したインデックスは次の6種類。
- MSCI EMU ESG Screened Index
- MSCI USA ESG Screened Index
- MSCI Europe ESG Screened Index
- MSCI World ESG Screened Index
- MSCI Japan ESG Screened Index
- MSCI Emerging Markets IMI ESG Screened Index
注目されるのは、グローバルレベルのインデックスとともに、地域別、さらには日米については国別のインデックスも開発した点だ。日本ではこれまで社会的責任投資（SRI）やESG投資でも「除外アプローチ」はあまり好まれず、「ベスト・イン・クラス（環境負荷等の高い産業でもその中で最も効率のいい企業に投資する）」手法が採用されてきた。
それだけに、今回の「MSCI Japan ESG Screened Index」は、事実上、初の標準的な除外スクリーニング手法ともいえる。同インデックスの除外リストに、日本のどの企業が名を連ねるのか。そうした指標をどの投資家が活用するのか。
公表された共通除外規定から想定すると、燃焼用石炭、タールサンド掘削関連の企業となると、エネルギー開発企業や商社が該当しそうだ。核兵器関連の日本企業は見当たらないと思われるが、部品、半導体等で影響があるかもしれない。民間向け銃器などでは、工作機械等があり得る。
タバコの除外企業は明確だ。日本たばこ産業である。グローバルコンパクト原則の違反企業は、途上国で労働争議や人権問題を提起されている企業、贈収賄事件を引き起こした企業等が該当する。今後、この対象企業は増加しそうだ。
共通除外規定を備えたインデックスは、投資家の投資政策や、パフォーマンスベンチマークとして使用されるようデザインされているという。
MSCIのESG IndexesのGlobal 責任者であるDeborah Yang氏は「市場の投資アプローチとして除外規定を活用することは、長年、有益に機能しており、MSCIも過去20年以上にわたって実践してきた。機関投資家や富裕層の間に、ESG要因に抵触する企業を投資対象から除外する手法へのニーズが高まっていることに対応した」と説明している。
https://www.msci.com/documents/10199/6a121d7c-7c0f-7774-c658-c3e1f13888a7
Research Institute for Environmental Finance