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米SIF財団(US SIF)、2018年のSRI(サステナブルで責任あるインパクト投資)レポート公表。総額は2年前より38%増の12兆㌦(約1356兆円)に増大。ESG投資が底上げ(RIEF) 

2018-11-03 12:10:07

USSIF3キャプチャ
   米国のサステナブル投資を推進する非営利団体「US SIF Foundation」は、隔年発行の「米国サステナブルで責任あるインパクト投資(SRI)動向レポート2018年版」を公表した。それによると、米国のSRI投資は前回調査から38%増の12兆㌦(約1356兆円)に達した。市場ベースの資産運用総額46兆6000億㌦の4分の1がSRI運用ということになる。

(上の図表は、1995~2018年の間の米国SRI投資の推移)


  US SRIは1995年にこの調査を開始、最初は6390億㌦と1兆㌦に満たなかった。23年で約18倍の12兆㌦に膨れ上がったことになる。

 SRI投資は当初、「社会的責任投資:Socially Responsible Investment」と呼んでいた。しかし、US SIFは最近、「Sustainable, responsible and impact investing 」と言い換えている。ESG関連投資に軸足を移しているためだ。

 今回、前回の2016年調査から38%の増加となった背景にも、ESG評価で投資をする資産運用額が前回の8兆1000億㌦から44%増の11兆6000億㌦と伸び、SRI投資全体を底上げした。調査対象となったSRI投資を実施する機関投資家は496機関、資産運用会社は365社、コミュニティ投資金融機関が1145機関となっている。

 資産運用会社がSRI運用を増やす最大の要因は、顧客機関からの要請と答えている。また機関投資家の場合は、運用ミッションと社会的ベネフィットの追求を最優先するため、としている。

 

 投資家がSRI投資に際して重視するESG課題の上位の要因は、気候変動/カーボン、タバコ、紛争リスクがトップ3を占めた。

 

 

 ESG評価の高い投資をするだけでなく、投資先企業に対して、ESG配慮を積極的に求める株主提案も増えている。前回の2016年から、今年上半期の間に、165の機関投資家と54の資産運用会社が投資先にESG課題で株主提案を行ったと回答した。これらの機関の総資産額は1兆8000億㌦に達する。



 US SIF財団のCEO、Lisa Woll氏は「資産運用会社も機関投資家も、ESGクライテリアと株主エンゲージメント活動を駆使して、気候変動やダイバーシティ、人権、兵器、政治的支出などの多様な課題へ対応している」と分析している。また、機関投資家等とは別に、個人投資家も3兆㌦に近いサステナブル資産を積み上げているという。


 機関投資家のWallace Global Fundの代表理事、Ellen Dorsey氏は「われわれは、US SIFの調査は、SRI投資を評価する重要なツールとして支持している。われわれの投資ミッションを100%達成するためのベンチマークと位置付けている」とコメントしている。


 またTIAAの投資運用部門のNuveenの責任投資野グローバル責任者であるAmy O’Brienも「今回のUS SIFのレポートは、投資家が明らかにESGの価値を投資要因として理解し始めたことを示している。気候変動や企業取締役のジェンダー多様性などの重要課題を重視することで、長期的に株主価値の向上に資することを期待している」と指摘している。

 

 日本のSRI投資総額は、SIF Japanの投資家対象アンケートで2017年9月時点で、136兆5959億円と推計されている。ここ数年、ESG投資が増大しているが、米国と比較すると、ほぼ10分の1の規模だ。

 

 https://www.ussif.org/files/Trends/Trends%202018%20executive%20summary%20FINAL.pdf