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英政府、企業の気候リスク・オポチュニティ情報開示の義務化を否定。フランスのArticle173型より、企業の自主的開示を優先。「受託者責任」は法的に位置付けへ(RIEF)

2018-11-06 21:48:03

FCAキャプチャ

 

  英政府は議会委員会が要求していた気候変動関連の金融情報開示を、上場企業等に義務付ける案を否定した。下院の超党派の環境監査委員会(EAC)が6月に法制化を求める報告書を出していた。EACはフランスがエネルギー転換法173条(Article173)で、企業に対して気候関連情報開示を義務付けていることに倣って、英国でも情報開示の義務化を求めていた。

 

 ただ、EACが報告書で求めていた、資金運用機関等が環境に関連した長期のリスク・オポチュニティを投資に際して考慮するフィデシャリー・デューティー(受託者責任)を有することを、法律で明確化することなど、年金基金のガバナンス体制の改革については同意した。

 

 EACは報告書において、英国の投資チェーンが全体として、短期リターンを追求する構造的なインセンティブに偏っており、しばしば、長期的な配慮を欠く投資になっているとの懸念を表明。もし金融当局が現行の金融法体系や金融機関のガバナンスの適正化と、気候リスクを制御するモニタリングの改善に失敗するようならば、フランスのArticle 173のような法制化が必要、と指摘していた。

 

 英政府は、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が求める気候情報開示に対して支持を表明している。しかし、TCFDの勧告に沿った情報開示を上場企業に求める一方で、「政府は情報開示を促進する特別の行動はとらない」との立場を鮮明にした。企業の自主的開示路線を重視したのは、市場取引をベースとするロンドン市場ではフランス流の義務的開示は似合わないとの判断もあるようだ。

 

 その一方で、機関投資家等のフィデシャリー・デューティーを法的責任として明確にしたことも、「フランス流」との違いを強調した形となった。ただ、EAC議長のMary Creagh氏は「英政府が、大企業や機関投資家に気候リスクとオポチュニティの開示をフランスのように義務化するチャンスを活用しないのは残念としか言いようがない」とコメントしている。

 

 法律事務所ClientEarthの気候問題専門家のAlice Garton氏は「政府は、投資家が投資先企業の気候情報開示に依存していることを理解しているが、企業の気候情報開示は時に半分以下だったり、まったく開示しない企業があったりする。気候情報開示は明らかに失われた輪(missing link)だ」と指摘、政府の対応を求めている。

 

https://www.fca.org.uk/