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グローバル市場のグリーンボンド発行総額、5000億㌦(約56兆5000億円)台に乗せる。最大の発行国は米国、次いで、中国、フランスの順。日本は8番目(RIEF)

2018-11-20 23:24:03

GB11キャプチャ

 

 グリーンボンドは2007年に初めて発行されたが、このほど発行総額5000億㌦(約56兆5000億円)に達したことがわかった。直近の総発行件数は604件、総額5005億㌦となった。発行から11年で5000億㌦市場に成長したことになる。最大の発行国は米国で全体の約2割に相当する1062億㌦、次いで中国、フランスの順。日本は上位8位となっている。

 

 英Environmental Finance 誌のデータベースの集計による。5000億㌦台乗せは、先週、ドイツの Munich Hypが最近発行した5億ユーロ(5億6900万㌦)のグリーンボンドが記念の発行となった。これらの総発行額のうち、償還されたものを除いて、現在も市場で取引対象となっているのは4億2600万㌦。

 

 グリーンボンド第一号は、2007年に欧州投資銀行(EIB)が発行した気候配慮ボンド(Climate Awareness Bond)の6億ユーロ。単一の発行体で最も多く発行しているのは、米連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ)で、発行額は全体の1割近い9.63%に相当する486億㌦。グリーン住宅向け融資ローンを担保としたグリーンボンドを定期的に発行してきた。

 

 最初にグリーンボンドを発行したEIBも定期発行を重ね、6.41%の324億㌦を発行してきた。ドイツの公的金融機関の復興金融公庫(KfW)も定期発行に貢献、3.32%の168億㌦分を発行してきた。

 

発行体の種別。最大は企業
発行体の種別。最大は企業

 

 国別で米国に次ぐ中国は全体の16.62%に相当する839億㌦、フランスが10.67%の539億㌦で、米中仏の3カ国で全体の半分近い48.3%を占める。世界銀行やEIB等の国際公的金融機関も12.85%の649億㌦を占めている。日本はスペインに続いて8位。

 

 発行通貨別では米ドル建て、ユーロ建て、中国人民元建てが上位3通貨で、これ等を合わせると全体の86.76%となる。日本円建ては国内企業によって8位の利用通貨となっている。

 

  発行体別では、企業発行が28.98%で、次いで金融機関が23.04%、国際公的金融機関が12.85%となっている。グリーンボンド国債ではフランス国債が、市場全体の3.39%に相当する166億㌦を発行している。

 

個別発行体のランキング
個別発行体のランキング

 

 グリーンボンドは、当初、世銀やEIBなどの国際公的金融機関が中心となって、彼らの途上国等での温暖化対策事業への投融資資金を調達するために発行してきた。それが2014年に民間金融機関が自主的な基準であるグリーンボンド原則(GBP)を制定して以来、金融機関や企業の発行が急増してきた。

 

 GBP策定にかかわったBank of America Merrill Lynch のESG capital marketsのグローバル責任者であるSuzanne Buchta氏は「グリーンボンド市場は、あらゆるレベルとあらゆる産業を通じて、環境課題に注意を喚起し、エネルギー移行への関心をグローバルに持たせるために対話を促すという、初期の目標を達成した。今後は、政治家や欧州委員会がサステナブルファイナンスの法制化等を目指した長い道のりを向かうだろう」と述べている。

 

 同じくGBP制定に関わったCredit Agricole CIB のサステナブルバンキング責任者のTanguy Claquin氏は「グリーンボンドはボンド市場と気候変動の緩和市場との関係を、資本市場の専門家やメディア、市場当局者とともに強化し、グローバルな理解を高めることにつながった」と評価している。

 

 グリーンボンド市場は順調に拡大してきている。だが、新たな課題も膨らんでいる。基本の「グリーン」の定義を明確化するか、現在の市場ベースの自発的な取引市場を、一定の取引ルールに基づく市場にどう展開させていくのか、あるいは、していかないのか。

 

 現在、欧州委員会が来春を目指してEU共通のグリーンボンド基準の制定を目指しているほか、国際標準化機構(ISO)でもグリーンボンド規格の制定作業が進んでいる。こうしたルール化は市場拡大の新たな起爆剤になる期待がある一方で、現在も日本や中国のように、GBPなどと微妙に異なるガイドラインを制定し、自国版のグリーンボンドを発行しているケースをどう統合していくか。

 

 5000億㌦に達するのに11年かかった。次の目標である1兆㌦乗せには、ここ数年の伸び率をベースにすると、半分以下の5年程度で達成が可能性だ。また「グリーンに資金使途を絞ったボンド」という概念から、グリーン性の評価をすべてのボンドの評価対象に組み入れるメインストリーム化への移行も、次の論点だ。