HOME6. 外国金融機関 |欧州中央銀行(ECB)、量的緩和策でのグリーンボンド購入額60億ユーロ(約7680億円)に達する。ドラギ総裁が明らかに(RIEF) |

欧州中央銀行(ECB)、量的緩和策でのグリーンボンド購入額60億ユーロ(約7680億円)に達する。ドラギ総裁が明らかに(RIEF)

2018-11-21 07:58:10

Doragiキャプチャ

 

 欧州中央銀行(ECB)が欧州以外の企業が発行したグリーンボンド全体の20%に相当する60億ユーロ(約7680億円)を保有していることを明かした。ECBが実施している量的緩和策の資産購入プログラム(APP)の一環として、市場から調達したという。ECBはこれまでもグリーンボンドを調達手段に加えていることを認めてきた。だが、総額が60億ユーロにのぼることを認めたのは初めて。

 

 これまでドラギECB総裁は、グリーンボンドを金融政策の調達手段に加えることについて「気候変動対策のプロジェクトにプラスの影響を与える。金融政策のポートフォリオによって、サステナブルプロジェクトへのファイナンスを実質的に支援することに貢献している」と肯定的に表明してきた。http://rief-jp.org/ct6/80277

 

 今回、明らかになったグリーンボンド資産の保有量は、ECBの資産購入プログラム(APP)の4つのプログラムのうち、社債を購入するCSPP(corporate sector purchase programme)での調達分。ECBは今年末にも、これらの量的緩和策を停止する方針を示している。

 

 しかし、量的緩和終了後も、金融政策変更の影響を緩和するため、満期償還となった金融資産と同額分の金融資産を新たに購入(再投資)するとみられ、当分の間はグリーンボンドの購入を含む再投資を続けるとみられる。

 

 市場では、ECBのグリーンボンド保有額が大きいことに驚きの声があがっている。というのは、欧州のグリーンボンド市場ではこのところ、発行よりも投資需要が大きく、新規発行ボンドに対しては応募超過の状態が続いている。中央銀行が率先して買っていたことは、「一種のクラウディング・アウト」との指摘も出ている。

 

フランクフルトのECB本部
フランクフルトのECB本部

 

 グリーンボンドが量的緩和策の調達手段の一つとして活用されていることは、ユーロ参加国が財政赤字削減に務めることで、国債の供給が全般的に細る傾向にあり、調達資産の多様化が図られている影響を受けているともいえる。ECBはCSPPなどで購入した証券を銀行に貸し出す政策も実施している。

 

 今回のグリーンボンド購入額の公表は、グリーン連合に所属する欧州議員のErnest Urtasun氏がドラギ総裁に出した質問状への回答に基づく。同氏は気候変動に伴うECBのAPP全体でのグリーンボンド資産への投資量を問うた。これに対してドラギ総裁は、「APPでは適格ボンドは(グリーンかどうかではなく)差別なく購入している」と説明するとともに、CSPPでの購入情報を開示した。

 

 60億ユーロの保有量は、欧州中央銀行システム(ESCB)を構成する19の加盟各国中央銀行の保有総量。CSPPによる市場からの社債購入総額は1400億㌦に上っており、グリーンボンドの購入は4.3%分。これを多いとみるか、少ないとみるか。

 

 ESCB参加中央銀行は各国国内金融市場で市場操作を担う。フィンランド中央銀行は今年初め、投資資金の運用に際して「責任投資基準」を制定し、投資ポートフォリオにグリーンボンド投資を明確に位置付けている。またフランス中央銀行も同様の政策アプローチをとっているとみられる。http://rief-jp.org/ct6/81325

 

 ドラギ総裁は「現在、われわれのグリーンボンド投資がグリーンボンド市場全体にどう影響しているかを調査している」とも述べた。グリーンボンド市場への影響は、クラウディング・アウトの懸念のほかに、発行体からは、安定的な需要者として計算に入れることができるので、歓迎されている。