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全米最大の公的年金、CalPERSのナンバー2の投資責任者が、在任7ヶ月で辞任。 投資方針の食い違いか(RIEF)

2019-01-15 12:20:16

CalPERSキャプチャ

 

 ガバナンス面での課題が浮上している米最大の公的年金カリフォルニア公務員退職年金基金(CalPERS)で、最高投資執行責任者(Chief Operating Investment Officer:COIO)が在任7ヶ月で辞任、憶測を呼んでいる。CalPERSは昨年秋の理事改選でESG運用傾斜を批判する候補が現職議長を破るなど、ガバナンスのあり方をめぐる軋轢が生じている。今回のCOIOの突然の辞任は、投資方針をめぐる対立の可能性もある。

 

 (写真は、CalPERSを辞任したBourqui氏)

 

 辞任したのはCOIOのElisabeth Bourqui氏。CalPERSの投資部門で最高投資責任者(CIO)に次ぐナンバー2のポジションにあった。同氏は、昨年5月、当時のCIOのTed Eliopoulos氏に引き抜かれる形で、スイスを本拠とする多国籍企業ABBグループの年金責任者のポストから、CalPERSに移籍した。

 

 ABB時代のBourqui氏は、リスク評価や資産分析、財務モデリング等をオンライン管理し、AIを導入するなどの先端技術の導入と分析に力を入れてきた。その結果、過去4年間で24.63%のリターンをあげるなど、同業他社を大きく上回る実績をあげ、2017年には投資専門誌が選ぶ「最高CIO」賞を受賞した経歴もある。

 

 ただ、同氏を引き抜いたEliopoulos氏が昨年11月に「家庭の事情」で辞任、その後、モルガンスタンレーの投資担当の副会長になり、CalPERSを離れている。その後、今月になって新たにCIOに就任したBen Meng氏がBourqui氏を「解任」したとの見方もある。今回の異例の人事は、CalPERSの経営責任者同士の人間関係の問題なのか、投資方針をめぐる対立なのかが市場の関心事でもある。

 

CalPERSのCIOのBen Meng氏
CalPERSのCIOのBen Meng氏

 

 CalPERSでは、昨年秋の理事改選で、ESG投資路線を推進してきた理事議長のプリヤ・マサー(Priya Mathur)氏が、同路線を批判する新人対抗馬のジェーソン・ペレス(Jason Perez)氏に敗れる波乱が起きている。ペレス氏の理事会入りは、今月16日の予定。http://rief-jp.org/ct6/83502

 

 さらに、実務レベルの最高経営責任者(CEO)であるマーシー・フロスト氏にも経歴詐称問題が起きている。フロスト氏は2016年10月からCEOを務め、マサ―氏の絶大な信認を得てきたとされる。しかし、実は彼女は大学を卒業していないことが公表されていなかった。

 

 これらの一連の理事会、執行幹部の人事面での不明瞭さが表面化する背景には、CalPERSの財政が組織のコスト増と運用の低迷で悪化していることがある。理事選挙で議長を破ったペレス氏は「現在の資産は将来の総支払年金必要額等の71%しかない」と、ESG運用傾斜を批判し、票を集めた。

 

 ただ、今回の Bourqui氏の場合、まさに運用のプロであり、ESG運用重視が辞任の背景になったかどうかは不明。あるいは彼女は、CalPERS入りしてその組織運営に幻滅した可能性もある。彼女がどの年金・投資機関に転籍するかが一つの判断材料になりそうだ。

https://www.calpers.ca.gov/

https://www.ai-cio.com/news/calpers-no-2-investment-officer-resigns/