国連の要請で、M・ブルームバーグ氏主導の金融賢人イニシアティブ「CFLI」創設。金融賢人にはGPIFの水野氏も。9月の国連気候サミットで「1.5℃対応」の金融の役割を提言へ（RIEF）
2019-01-18 22:00:28
Bloomberg社のマイケル・ブルームバーグ氏は17日、国連の要請を受けて、気候変動問題への金融市場の取り組みを促す新たなイニシアティブ「Climate Finance Leadership Initiative （CFLI）」を立ち上げた。CFLIはグローバル金融市場に影響力を持つ8人の創設メンバーをそろえ、その中には日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF）の最高投資責任者（CIO）の水野弘道氏も入っている。
CFLIの創設は、国連のグテレス事務総長が国連気候変動大使でもあるブルームバーグ氏に直接要請し、組織された。その目的は、パリ協定の国際目標達成に向けて、金融機関、同市場による気候変動への取り組みを促すもので、７月の先進国首脳会議（G7）の際に金融による気候変動対応のベストプラクティス策を提供する中間報告を、９月のニューヨークでの国連気候サミットの際に最終報告を公表するという短期集中型の取り組みとなる。
金融機関がグローバル規模で、CO2排出量を抑制し、気候変動に強靭な社会作りに貢献するクリーンエネルギー等への投資を増やすための、革新的なパートナーシップの構築や、プロジェクト、連携への貢献への取り組みの提言を目指すという。
創設メンバーは、ブルームバーグ氏のほか、元米証券取引委員会（SEC）会長のMary Schapiro、仏保険AXAの CEO、Thomas Buberl氏、英銀行 HSBC、CEOのJohn Flint氏、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF）のCIO、水野氏、米ゴールドマンサックスのCEO、David Solomon氏、 イタリアの電力大手EnelのCEO、 Francesco Starace氏、それにオーストラリアのMacquarieの CEO Shemara Wikramanayake氏、という面々だ。
議長となるブルームバーグ氏は、「 CO2の排出削減と再エネ分野での雇用創出につながるプロジェクトへの投資を早急に加速すればするほど、気候変動に伴う健康被害や経済的リスクの削減を進めることが出来る。このイニシアティブは、気候変動と闘うためのより多くの資本をわれわれにもたらすことで、そうした目的に合致する」と意気込んでいる。副議長にシャピロ氏が就く。
昨年の10月に国連の気候変動に関する政府間パネル（IPCC）は、気候変動の加速を阻止するためには、パリ協定が公約した2℃抑制シナリオよりも1.5℃抑制を目指すシナリオの必要性を強調する特別報告書を公表している。国連事務総長直々の要請による金融界の「賢人グループ」組織の創設は、そうした事態の緊急性を踏まえて、金融界の動きを加速させることが狙いとみられる。
創設メンバーに名を連ねたAXA GroupのCEO、Thomas Buberl氏は、「気候変動のリスクを避けるには、深くかつ迅速な行動が必要だ。AXAは投資ポートフォリオを化石燃料関連からよりグリーンな投資へシフトさせることで、われわれの果たすべき役割にコミットしている。また気候変動リスクを開示する仕組みづくりの提案をしたTCFD勧告を全面的に支持することで、他の金融機関・企業等とも連帯していくつもりだ。そのためにも気候ファイナンスをもっと迅速、かつ大規模にスケールアップする必要がある」と述べている。
HSBCのJohn Flint氏は、「HSBCとして、この重要なイニシアティブに参加できたことは光栄だ。気候変動は、われわれの環境、社会、そして経済にとっての主要な脅威だ。低炭素経済への移行を支援することは、われわれにとっての最優先課題であり、われわれは2025年までに世界全体でサステナブルファイナンスのプロジェクトを支援するために1000億㌦（約11兆円）の資金供給を目標として掲げている。現在はその4分の1の道程にある」と語っている。
Research Institute for Environmental Finance