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フィンランド最大の年金保険、バルマ・ミューチュアル、石炭関連産業を投資対象から除外。TCFD勧告に沿う気候リスク開示も実施へ(RIEF)

2019-02-04 09:16:27

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 フィンランド最大の年金保険会社のバルマ・ミューチュアル・ペンション保険は、売り上げに占める石炭関連企業との取引が30%を超える企業を投資対象から除外する「ブラックリスト」に入れると宣言した。同時に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告に沿って投資対象についての気候リスク開示を展開すると公表した。

 

 バルマは、自社の「責任投資原則」を改定し、投資方針として明文化した。同社は2004年には、タバコ産業と核兵器関連産業を投資対象から除外している。さらに、その他の対人地雷やクラスター爆弾、化学・生物兵器等の製造企業も投資対象から除外している。

 

 今回、新たに除外対象に加えたのは、通常の石炭関連事業と、欧州に多い褐炭関連産業。これらの企業との取引による売り上げが30%以上ある企業を投資除外するだけでなく、売り上げが30%未満だが石炭関連企業との取引が続いている企業についても、常時モニタリングを続け、企業へのエンゲージメントをとっていくとしている。

 

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 また、すべての投資対象企業について、気候変動リスクの影響等のESG評価のモニタリングを高めると宣言した。投資判断全体に、気候リスクを軸としたESG評価のスクリーニングをかけるのは、TCFD勧告に沿った対応となる。特に重視する産業として、石油・ガス産業、電力・熱製造業、自動車、鉱業、コンクリート製造、輸送産業を名指ししている。

 

 バルマの投資部門担当の代表副社長のReima Rytsölä氏は「投資機関として、われわれの優先度は、気候変動への対応を投資先企業と直接対話し、責任あるビジネスを要求する点にある。ただ、倫理的な理由から投資したくない産業もある」と述べ、企業へのエンゲージメントと、ダイベストメント(投資引き揚げ)を並行して進める姿勢を示した。

 

 Rytsölä氏は「主要な投資家として、投資を通じてCO2排出量削減のための責任を果たすための具体的事例を世に示すことは、われわれ自身の責任だ。石炭関連企業を投資対象から外すことに加えて、投資対象に対する特別のESG評価分析を使ったモニタリングによって投資対象企業を特定していく」と、投資を通じてESG重視企業を後押ししていく姿勢を強調した。

 

 ESGモニタリングによる企業選別は、アルコール製造企業や法的に認められた大麻製造業、成人用エンターテイナー産業、ギャンブル業、通常兵器製造業等に対しても適用するとしている。

 

 また気候リスクを同社の財務報告書に盛り込むため、TCFD勧告に沿った気候リスクの情報開示を実施する。一例として、投資対象となる欧州大陸のライン川周辺の水不足による周辺企業への影響を評価に加えるとしている。投資対象企業が、毎年悪化する水不足の影響への備えを高めれば高めるだけ、投資リターンも確実性を増す、と指摘している。

 

 Rytsölä.氏は「われわれの投資ポートフォリオは決して完全ではない。進歩の途上だ。パリ協定に沿って一歩ずつ高めていく。投資家が間違いやすいのは、気候リスクへの対応はあまり投資上の価値がないと考えることだ。そうではなく、ポートフォリオ全体を一気に変えることはできないので、一歩ずつ進めることが重要だ」と述べている。

 

 バルマは投資価値は454億ユーロ(約6兆円)、投資リターン7.8%(2017年財務報告)となっている。

 

https://www.varma.fi/en/other/newsroom/news/2019-q1/varma-has-updated-its-investment-blacklist–industries-excluded-for-ethical-and-climate-reasons/

https://www.varma.fi/en/other/about-varma/annual-report/