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2019年のグリーボンド市場の発行予測額、Moody'sは2000億㌦(20%増)、S&Pは1800億㌦(約8%増)。急成長パターンからじっくり成長型に移行(RIEF)

2019-02-05 17:49:31

GB1キャプチャ

 

 格付機関のMoody’sとS&Pは、今年のグリーンボンドの発行が昨年より増加し、Moody’sは年間2000億㌦(前年比約20%増)、S&Pは1800億㌦(同8%増)となるとの予測を、それぞれまとめた。ともに市場の増加を予測しているが、伸び率はS&Pは一ケタ台と慎重だ。最近のグローバルな債券市場は低利回りが続いており、両機関とも2018年以前のような市場の急成長は見込めないと予測している。

 

 昨年のグローバル市場でのグリーンボンド発行額は年間1670億㌦で前年比約5%増にとどまった。昨年年初の見通しでは2000億㌦台乗せを予測するところもあった。実際、Moody’sの場合、2500億㌦と強気の見通しを立てていた。パリ協定を受けた各国の温暖化対策が本格化するとの判断だった。

 

 しかし、米金利上昇により、株式市場から債券市場に投資資金が流入、債券市場の利回りが世界的に低下するという金融市場の基本構造の変動が起き、グリーンボンドによる資金調達も慎重に転じた。このため、年間の発行額は伸び悩んだ。債券市場全体での新規発行額も前年に比べると7.6%の減少だった。両機関は今年もこの基調は続くとみている。

 

 Moody'sキャプチャ

 

 グリーンボンド市場も債券市場全体の基調の変化の影響から免れられない。だが、一般の債券発行市場とは違って、両機関ともグリーンボンドの発行額自体はプラスの成長を続けると予測している。それは債券市場全体に占めるグリーンボンドの割合が、2017年の2.2%から18年は2.5%へと高まり、Moody’sによると、昨年第4四半期の割合は、4.4%にまで拡大していることでも伺える。投資対象のプロジェクトが投資家に見えるグリーンボンドの特性が、機関投資家に評価される基調は続くとみている。

 

 S&Pもグリーンボンド市場は、発行体、投資家両方の環境リスクへの気付きの広がり、新たなビジネス機会への期待、規制・政策の強化といった傾向が続くことから、 債券市場全体が低迷する中でも、相対的に投資家の投資意欲をかきたてる市場として堅調に推移するとみている。

 

 ただ、これまで年間平均80%増という急成長を続けてきた伸び率は、経済環境の不透明化、グリーンボンド市場全体が成熟化しつつあるなどの変化によって、鈍化する。サステナブルファイナンス全体では、投資家が投資判断において広範囲なサステナビリティ考慮を盛り込むようになっているので、引き続き成長するとみている。

 

 S&P1キャプチャ

 

 グリーンボンド発行市場の中心は、引き続き欧州でのユーロ建てが多数を占めるとみている。資金使途としては、再生可能エネルギーや輸送、ビル等が中心になる。ただ発行国の多様化が進んでおり、ボンドの種類も多様化がさらに進行すると、S&Pはみている。

 

 Moody’sは、欧州委員会が進めているグリーン事業の分類化(Taxonomy)やEU共通グリーンボンド基準の制定などの作業が、長期的なボンド発行手順やインパクトレポーティングの共通化を進めることになり、グリーンボンド市場の発行環境を改善するとしている。

 

 さらに、各国政府がパリ協定に沿って、自国のCO2削減目標の達成に向けたコミットメントを高めることが、グリーンボンド市場の成長を持続させる、と指摘。現在、各国政府がグリーンボンド国債を発行して、気候変動対策資金を市場調達している動きを歓迎した。グリーンボンド国債の発行額はグローバルで290億㌦に達している。

 

 日本政府は、膨大な財政赤字を抱え、削減のメドをつけていないが、気候変動対策のプロジェクトを投資家にみせることのできるグリーンボンド国債の発行は、日本にとっても、グリーンな公的資金を捻出する一つの方法と考えられる。

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