HOME11.CSR |2018年のグローバルなサステナブル投資総額、30兆6830億㌦(約3375兆円)。日本は急成長し約240兆円。ただ、「穏健な投資」が主体。国際的な持続可能な投資団体GSIAが推計(RIEF) |

2018年のグローバルなサステナブル投資総額、30兆6830億㌦(約3375兆円)。日本は急成長し約240兆円。ただ、「穏健な投資」が主体。国際的な持続可能な投資団体GSIAが推計(RIEF)

2019-04-05 13:32:35

GSIA1キャプチャ

 

 持続可能な責任投資(SRI)の国際連携団体であるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は2018年の「グローバルサステナブル投資動向」を公表した。それによると、投資総額は30兆6830億㌦(約3375兆円)で、前回調査(2016年)より34%増、年平均15.6%増という高成長が続いているとしている。日本はESG投資ブームを受けた形で、2年前より4.6倍増の2兆1800億㌦(約239兆8000億円)に拡大、「サステナブル投資急成長国」という。

 

 調査は、隔年ごとに、SRI投資やESG投資を推進する主要国の民間団体が共同で実施している。GSIAの構成団体は、米国USSIF、欧州Eurosif、英国UKSIF、オランダVBDO、カナダRIA Canada、オーストラリア・ニュージーランドRIAA、日本のJSIFで構成する。

 

 対象となるサステナブル投資は、伝統的なネガティブスクリーニング方式のほか、ポジティブスクリーニング、規範ベーススクリーニング、ESG統合型、サステナビリティテーマ投資型、インパクト/コミュニティ投資型、エンゲージメント/議決権行使型の7パターンの投資行動としている。

 

グローバルなサステナブル投資の推移
グローバルなサステナブル投資の推移

 

 今回の調査で示されたグローバルなサステナブル投資総額30兆6830億㌦のうち、もっとも多いのは欧州で全体の45%を占める14兆750億㌦、ついで39%の米国が11兆9950 億㌦。前回調査比伸び率は欧州が16%増、米国が37%増。欧米を合わせると全体の8割以上を占める。日本は前回調査では総額で5位だったが、4.6倍増の急成長で、カナダ、オーストラリア ・ニュージーランドを抜いて、3位に躍進した。

 

 投資対象資産全体に占める比率は、欧州が48.8%で、前回調査より3.8ポイント低下したものの、全体のほぼ半分を維持している。米国は25.7%でほぼ4分の1。カナダは前回の37.8%から伸びて50.6%と過半割合に、オーストラリア・ニュージーランドも63.2%と前回から12.6ポイント増加し、順調に拡大している。日本は絶対額では3位に躍進したが、総投資資産比率では前回の3.4%から18.3%への伸びにとどまり、調査対象国では最も低い割合だ。逆に言うと、まだ躍進余地があることにもなる。

 

 日本のサステナブル投資が増大している背景には、政府がスチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードを策定して企業と金融機関双方にESG評価の視点を求めているほか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資に力を入れていることも大きい。また、生保等の長期投資家もサステナビリティを投資方針に盛り込んだ行動をとっている。投資運用機関もEAG評価力で競い合う展開もみられる。

 

各地域のサステナブル投資方式の違い
各地域のサステナブル投資方式の違い

 

 ただ、日本のサステナブル投資の中身をみると、欧米諸国等との違いも浮き上がる。グローバルな同投資でもっとも多いのは、投資対象からタバコや石炭火力等の特定産業を除外するネガティブスクリーニング。全体の64%を占める。欧米はこれらが主流だ。

 

 ところが日本はこの方式の投資は極めて限られている。最も多いのは、エンゲージメント/議決権行使型となっている。同方式は、投資家が株を保有する企業に対して株主総会等を軸に、ESGやサステナブル活動を対話等を通じて要請したり、総会での議決権行使を行う。対話や働きかけを通じて、企業の行動をESG配慮型に切り替えさせるという「穏健」な手法ともいえる。

 

 しかし、ネガティブスクリーニングや、その逆のESGに優れた企業を積極的に選んで投資するポジティブスクリーニングなどに比べると、投資効果が明瞭には出にくいとされる。企業に働きかけて効果が得られなくても、投資家サイドはESG活動と分類し、サステナブル投資にカウントされるためだ。

 

 投資家にとって保有株を売却したり、新たに買い増しするなどの投資判断を当面は伴わないことから、他の手法に比べて「取り組み易い手法」であるのは間違いない。急成長する日本のサステナブル投資だが、サステナブル投資・ESG投資の実際の効果を検証する必要性も同時に浮上しているといえる。

 

http://www.gsi-alliance.org/wp-content/uploads/2019/03/GSIR_Review2018.3.28.pdf