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米格付機関S&P、初のESG評価ツール「ESG Evaluation」を開発。企業のESGスコア評価に加えて、将来リスク・機会への準備ぶりを評価(RIEF)

2019-04-18 19:04:48

S&P1キャプチャ

 

 格付機関のS&P Global Ratings は、同社初のESG評価ツール「ESG Evaluation」を開発した。ESG評価は評価機関によってマチマチで、投資家にとって統一性が取れていないとの不満があった。S&Pのツールは、投資家が投資を検討する企業の現在のESG業績と同時に、将来のESGリスク・オポチュニティへの対応力もわかる仕組みという。

 

 S&PはMoody’sとともに、伝統的な信用格付に加えて、ESG格付・評価分野に力を入れている。Moody’sは先にESG評価会社のVigeo Eirisの買収を決めたが、S&Pも2016年に評価会社Trucostを傘下に入れている。今回の評価ツールの開発ではTrucostチームも積極的に関わったとされる。

 

 評価の仕方は2段階に分かれている。まず、企業のESG要素を評価する「ESGプロファイル」を100点満点でスコア化する。プロファイルはE、S、Gの3要素を別々に評価する方法で、ESG評価大手のMSCIと同様のアプローチをとる。

 

 「プロファイル」評価のデータは、S&P Global Ratingsが信用格付の分析で把握しているデータのほか、Trucostや S&P Global Market IntelligenceのESG分析データ、さらに、PRIやCDP等の外部機関の公表データも活用している。

 

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 「プロファイル」をスコア化することで、同業他社とのランクが一目瞭然となる。同時に、同じセクターだけでなく、地域でのランクもわかる。ベンチマークに対する自社のESGプロファイルの位置を企業、投資家がともに評価できることで、改善インセンティブを高めるとしている。

 

 次いで、対象企業が将来のリスクや機会に対応する、長期のサステナビリティと準備ぶりに対するS&Pの定性的意見の「Preparedness」を示す。プロファイルとPreparednessの両方を合わせて総合評価とする。評価はその後、モニタリングされ、新たなデータ等が追加された際に随時見直される。

 

 定性意見の「Preparedness」は、5段階に分類される。Best In Class、 Strong、 Adequate、 Emerging、  Lowだ。「ESGプロファイル」と「Preparedness」は単純集計ではなく、「プロファイル」で最高の評価を得た企業は、「Preparedness」では、最上位の「Best-In-Class」か「Strong」のどちらかを求められるとしており、現在のESG取り組みと将来への備えのバランスを評価する。

 

 S&P Global Ratingのサステナブルファイナンスの責任者、Michael Wilkinsは「開発したESG Evaluationのツールは、フォワード・ルッキングのアプローチをとっている。ESGの先行きは2~3年の短期だけでなく、5年あるいは15年先はどうか、といった視点だ。気候変動や人口変動などのような、長期で、戦略的で、かつ壊滅的リスクへの対応を評価するようにしている」と説明している。

 

 S&PのESG Evaluationのもう一つの特徴は、これらの評価が企業の要望ベースで実施されるという点だ。これまでのESG評価は、ESGデータを利用する投資家を顧客としている。S&Pは分析アプローチを公表するので、企業はそのアプローチを自社で適用することで、自らがどう評価されるかが事前にわかる仕組みになっている。

 

 開発されたESG Evaluation ツールは、S&Pが別途開発した「ESG Risk Atlas」と併用することで、より有効に分析・評価ができるとしている。同Atlasは双方向チャートを活用し、国レベル、セクターレベルでのESGリスクを表現できる。また、自然災害への対応や、コーポレートガバナンス基準、ESG関連の規制への適応にも使える。

 

 S&Pは今回開発したESG Evaluationツールを、さらに、銀行、資産運用業、多国籍企業、公衆衛生、水、下水道機関、さらには保険や社会的住宅、学校、教育機関等、セクターごとに開発する方針という。

 

https://www.spglobal.com/en/capabilities/esg-evaluation