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米ニューヨーク市住宅開発公社、中低所得のニューヨーカーのため、「持続可能な隣人債(SNB)」、約300億円分発行。てごろな住宅向け住宅ローン等に充当(RIEF)

2019-04-18 22:09:00

NYState1キャプチャ

 

  米ニューヨーク市の住宅開発公社(NYHDC)は、最新のサステナブル・ネイバーフッド・ボンド(持続可能な隣人ボンド:SNB)、総額2億6990万㌦(約300億円)を発行した。SNBは低所得のニューヨーカーが利用可能な、手ごろな価格のアフォーダブルハウスへの住宅ローンや家賃補助金を調達するため。

 

 (写真は、中低所得者向け住宅の起工式)

 

 今回の発行分は、36本のトランシェに分かれ、期間も1年から39年と幅広く設定されている。クーポン金利は1.4%のものから、3.75%まである。こうした多様性は、対象となる住宅ローンや補助金の給付先が多様に細分化されるためとみられる。複数家族向けの「マルチファミリー・レベニュー債」の一部としての発行分もある。

 

 NYCHDCは、2015年に第一号のSNBを発行して以来、これまでに51億3000万㌦(約5600億円)を調達している。ニューヨークで働く中低所得者向け住宅に申し込む住民に、住宅ローンの補助や低利ローンなどを提供するファイナンス資金の調達手段と位置付けられている。

 

NYC3キャプチャ

 

 ニューヨーク市長のビル・デブラシオ氏は、2026年までに中低所得者層向けに30万世帯分のアフォーダブル住宅を供給する公約を掲げ、SNBによる資金調達を支援している。同市は、住宅価格が高い一方で、住民の過半数以上が黒人やヒスパニックその他のカラードで、所得水準は高くない。このため公営住宅や低利住宅ローン等のニーズが高い。

 

 ファイナンスの対象となる住宅取得者に対して、アフォーダブル住宅として低利ローン等を提供することで、ソーシャルボンドの対象になる。同時に、エネルギー効率化や廃棄物対応などが取り入れられていることから、米国グリーンビルディング協会が開発した環境性能評価システムのLEED認証も得ており、グリーン性も高い。

 

 NYCHDCの社長代理のRichard Froehlich 氏は「SNB債は、社会にインパクトを与える投資を求める投資家にとって重要な投資機会となる。また、ニューヨーカーの中で、もっとも経済的に困難な層を応援する『われらの隣人』への投資、としての意義も高い」と強調している。

 

 発行されたボンドは、Aa2と AA+の格付をMoody’s とS&P Globalからそれぞれ付取得している。投資銀行のJefferiesと JP Morgan、Morgan Stanleyが主幹事、共同副幹事がAcademy Securities、Bank of America Merrill Lynch、Barclays、Citigroup、Ramirez & Co、 Raymond James、RBC Capital Markets、Roosevelt & Cross、TD Securities、UBS、Wells Fargoがそれぞれ務めた。

 

 日本でも、ふるさと納税をめぐる論議が盛んだが、個人の寄付に頼るより、市場資金を活用する債券を発行して、コミュニティのインフラを強化し、中低所得層を支援、住み易い街づくりを推進する自治体が出てきてもよさそうだ。日本版「隣人債」の第一号に名乗りをあげるところはいないかーー。

http://www.nychdc.com/Sustainable%20Neighborhood%20Bonds