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アジア開発銀行(ADB)、アジア・太平洋地域のプラスチック海洋汚染防止のため5カ年「ブルー経済行動計画」スタート。総額50億㌦(約5600億円)。ブルーボンドで資金調達も(RIEF)

2019-05-04 20:53:48

フィジーで開いたアジア開発銀行総会で開かれた海洋汚染問題のセミナー(右端は中尾武彦ADB総裁)

 

   アジア開発銀行(ADB)は、アジア太平洋の海洋での廃プラスチック汚染等に対処するため、今年から2024年までの5カ年間の「健康な海洋と持続可能な“ブルー経済”行動計画」を推進する。総額50億㌦(約5600億円)を投じて、周辺国と海洋汚染防止の対策・技術開発等を推進するほか、ブルーボンド発行での資金調達も目指す。

 

 (写真は、フィジーでのアジア開銀総会で開いた海洋関係セミナー。右端は中尾武彦ADB総裁)

 

  フィジーで開いたADBの第52回年次総会で、中尾武彦総裁が打ち出した。中尾総裁は「アジア太平洋地域の反映は、健康な海洋と持続可能な開発に依存している。われわれはより強靭(レジリエント)な未来のために協働しなければならない」と強調した。新行動計画は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の第14目標(海の豊かさを守ろう)への貢献も目指す。

 

 行動計画は4分野をターゲットとしている。第一に、持続可能なツーリズムや漁業に基づいて、地域の生計とビジネス機会を創出する。次いで、沿岸と海洋のエコシステム、それに主要な河川の保護と汚染からの回復。3つ目は、プラスチックや排水、農業廃棄物など陸上から海洋に流れ込む汚染物質の削減。4つ目は、港湾や沿岸インフラの構築の持続可能化。

 

ADB総会で話す中尾総裁㊧
ADB総会で話す中尾総裁㊧

 

 廃プラスチックによる海洋汚染はグローバルに問題化しているが、アジア太平洋地域では、特に深刻な問題になっている。世界の廃プラスチック汚染の原因は、10の主要河川から海洋に流れ込むことが85~95%を占めるとされるが、それらの河川のうち8河川は同地域に存在するためだ。

 

 このため、すでに汚染された海洋の浄化だけでなく、陸上の河川からの汚染物質の海洋への流入を防ぐための対策が重要となる。さらに温暖化の進展による海洋の酸性化などのほか、有害物質による汚染増大、不正・不法漁業などの乱獲による漁業資源の減少なども、海洋のエコシステムを崩壊の危機に導いている。

 

 ADBはこうした現状を踏まえて、早急に緊急対策をとらないと、アジア太平洋地域のサンゴは2050年までに90%が死滅する可能性があるほか、すべての商業漁業はそれまでに消えてしまうと危機感を強めている。漁業の衰退は、食糧危機を招き、グローバル経済にも打撃となり、アジア・太平洋地域の数百万人の貧困層や脆弱なコミュニティの生計を危機にさらす。

 

 ADBは「ブルー経済行動計画」の資金調達の一環として、「海洋ファイナンスイニシアティブ(OFI)」を立ち上げている。ADBが50億㌦の資金を供給して民間の関連プロジェクトへの技術支援や信用リスク補完役を務め、民間資金の導入を促す考えだ。OFIの一環で、海洋開発・汚染防止等を資金使途とする「ブルーボンド」の発行も目指す。

 

 ブルーボンドの発行は、昨年10月に、インド洋のセーシェル諸島が海洋環境の保全や持続可能な漁業などを資金使途として、世界で初めて発行した実績がある。太平洋ではフィジーが2017年から18年にかけて、1億フィジードル(約5000万米㌦)のグリーンボンド国債を発行した例があるが、ブルーボンドの発行は、アジアではまだ例がない。http://rief-jp.org/ct4/78718

http://rief-jp.org/ct6/84168

 

https://www.adb.org/sites/default/files/related/145036/Action%20Plan%20for%20Healthy%20Oceans%20and%20Sustainable%20Blue%20Economies.pdf