英イングランド銀行総裁、マーク・カーニー氏の後任候補に、女性総裁の可能性も。英財務省が総裁選びの委託先に、女性パートナーだけで構成する英「ヘッドハント」会社を選任(RIEF)
2019-05-07 09:30:03
金融安定理事会(FSB)の議長でもある英イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が、来年1月で退任するが、その後任に女性総裁の可能性が取り沙汰されている。英財務省が後任候補の選択を、女性経営層で組織するヘッドハンティング会社を指名したことで、憶測を呼んでいる。
(写真は、次期イングランド銀行総裁を“ヘッドハント”する重責を担う英社代表のケート・ブラッシングさん)
カーニー氏は、気候変動リスクが金融システムに及ぼす影響を指摘、FSBに気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)を組織して、シナリオ分析等を勧告する報告書をとりまとめさせるなど、環境金融分野にも影響力を発揮してきた。
2013年1月に、カナダ中央銀行総裁からイングランド銀行総裁に抜擢され、安定した金融政策運営で評価されている。だが、本来の総裁任期は、2018年までだった。それが、英国政府がEU離脱(ブレグジット)を選択したことから、英金融市場の混乱を防止するため、2度にわたって任期を延長している。
現在の延長任期は2020年1月末まで。フィリップ・ハモンド蔵相はこのほど、次期総裁を選任するため、民間の英人材ヘッドハンティング会社「Sapphire Partners」に候補者の選考や対応を委ねた。同社は、JPモルガンやモルガンスタンレー、マッキンゼイなどを歴任した、ケート・グラッシング(Kate Grussing)さんが創設者で代表。
ケートさん以外のパートナー4人もすべて女性。さらに、アドバイザーには、トニー・ブレア元首相夫人のチェリー・ブースさん、元米SEC委員長のバーバラ・トーマスさんなども名を連ね、女性の実力者をビジネス社会に輩出してきたことで知られる。
もちろん、同社は女性以外の経営者のスカウトも担当する。だが、「女性総裁」が視野に入っていることは間違いないとみられる。もっとも女性ならば誰でもいいわけではない。新総裁は、「ブレグジット後(たぶん)」の英金融政策を担い、国際的にもFSBやバーゼル委員会で重責を継続することから、「多様性」とともに、幅広い「実力」が求められる。
ハモンド蔵相は「われわれはEUから離れるので、英国が引き続きグローバル市場で重要な役割を果たすことが最大のポイントになる。イングランド銀行総裁はそうした役割を果たすポストだ」と次期総裁の重要性を強調している。
現在のところ、次期総裁候補の下馬評には、現イングランド銀行金融政策委員会の副議長のBen Broadbent氏、金融行動監視機構(FCA)の代表、 Andrew Bailey氏の男性二人が「実務力」から有力候補とされている。インドの中央銀行であるインド準備銀行総裁を務めたシカゴ大学教授のラグラム・ラジャン氏の名もあがっている。
女性候補としては、前米連邦準備銀行(FRB)総裁のジャネット・イエレン氏、英情報通信庁(Ofcom)CEOのシャロン・ホワイト氏、ロンドンスクールエコノミクス(LSE)教授のDame Minouche Shafik氏らが取り沙汰されている。
また、Sapphire社は今年初めに、財務省の依頼で、Dame Colette Bowe氏とDame Jayne-Anne Gadhia氏を、イングランド銀行の金融政策委員会の外部委員として選任しており、 この二人も候補とされる。
Sapphire社代表のKateさんは、英国のブックメーカーが女性総裁候補を賭けの対象にしていることに眉をしかめながら、「多くの企業が経営シニア層に女性を選出していないことは、本当に失望する。時代遅れで、かつ怠慢だ」と指摘している。
候補者に対する財務省のインタビューは夏に実施され、総裁指名は10月の予定。気になるのは、カーニー総裁自身の退任後だ。この際、日本銀行の黒田総裁の後任に抜擢し、「令和の金融政策」を推進してもらう手もあり得ると思うが、どうか。
(藤井良広)