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アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁、初のグローバルボンドの資金使途に石炭火力事業が含まれるか回答せず。エネルギーインフラ投資重視の姿勢を強調(RIEF)

2019-05-20 22:46:58

AIIB1キャプチャ

 

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁は20日、日本で記者会見した。その中で同総裁は、今月、AIIBが初めて発行したグローバルボンドについて、環境配慮を強調したが、「グリーンボンド」と名乗らなかったことで、資金使途に石炭火力発電事業等が含まれるのではと問われた。同総裁は石炭火力事業の有無には直接答えず、「『グリーンでクリーンなアセットクラス』を新たな投資対象としていきたい」と述べるにとどまった。

 

 AIIBが発行したグローバルボンドは、ドル建てで総額25億㌦。期間5年、クーポン利率は年2.25%。資金使途はアジア全体を対象に、環境配慮を加えたグリーンインフラへの投資と、ESG投資事業と位置づけている。https://rief-jp.org/ct6/89731

 

 金総裁は、AIIBの投融資政策について「Lean、 Clean、 Green」を掲げ、「官僚主義を廃し、簡略(lean)な手続き、クリーン(clean)なインフラ建設を目指し、気候変動対策(green)にも対応する」と述べた。その第一弾の資金調達が今回の債券発行だが、グリーンボンドと命名しなかった理由として、「確かにグリーンボンドの名称はついていない。だが、調達資金はグリーン経済に使う。これがわれわれの政策であり、基本である」と強調した。

 

 AIIB2キャプチャ

 

 また「グリーンか、グリーンで無いかというのは、今後、すべての債券にグリーンへの配慮が盛り込まれるようになっていくと思われるので、そうしたことを表記せずともいいのではないか。われわれは今後とも、グリーンでクリーンなインフラ事業に投資していく」などと語った。

 

 ただ、アジアの途上国にはエネルギー需要の増大が顕著な国が少なくない。その一方で、気候変動対策も待ったなしの状況に入っている。AIIBはこれまでも、石炭関連事業へのファイナンスを指摘されてきた。

 

 欧州の環境NGOの「Bank Information Center Europe(BICE)」と、「Inclusive Development International (IDI)」が昨年6月に公開したレポートによると、AIIBの融資のうち、9億9000万㌦が5つの化石燃料関連事業に投じられているという。http://bic-europe.org/wp-content/uploads/2018/06/Press-Release-BEYOND-RHETORIC.pdf

 

 AIIBは金融仲介(FI)ビジネスとして、インドネシアの地域インフラ開発ファンド、インド・インフラファンド、世銀グループ国際金融公社(IFC)のEmerging Asian Fund(EAF)等に投資しているが、その投資資金が各ファンドの石炭火力発電等への「バックドア・ファイナンス(裏口投資)」になっている、との指摘もある。https://rief-jp.org/ct6/80410

 

 またAIIBは国際公的金融機関で、中国政府とは一線を画する立場を強調する。だが、先月、北京で開いた「一帯一路イニシアティブ(RBI)」第二回フォーラムでは、AIIBを含む国際公的金融機関も、中国主導のインフラ建設との協働をうたった。その中国は、超々臨界圧石炭火力発電事業を「クリーンコール」と明確に位置づけ、グリーンボンドの資金使途として位置づけている。

 

 金総裁が石炭火力関連事業へのファイナンスの有無を明瞭に答えなかったのは、「石炭火力向け融資があるのは当然。聞くまでもないだろう」ということだったのかもしれない。逆に、今回のグローバルボンドを「グリーンボンド」と名づけなかったのは、そこまで厚顔無恥に振舞えない、との思いだったのかもしれない。

 

 発足から3年半を経過したAIIBは、これまでに15カ国で39件のプロジェクトに総額79.4億㌦を投資している。その優先事項は、持続可能なインフラストラクチャー、クロスボーダーの接続性、民間資本の動員の3点で、いずれもインフラ開発を促すことを最優先している。また実施事業分野では、エネルギー、輸送、都市、デジタルインフラストラクチャーの4分野を重点対象としている。