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世界最大ソブリンファンドのノルウェーGPFG、石炭・石油など化石燃料関連企業株1.4兆円分の投資引き揚げ(Divestment)国会承認。過去最大規模。新たに再エネ直接投資に2.2兆円(RIEF)。

2019-06-17 08:47:36

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 ノルウェー議会は、世界最大のソブリンファンドである「ノルウェー政府年金基金(GPFG)」の投資対象から、石炭、石油・ガスなどの化石燃料関連企業株合計130億㌦分(約1兆4300億円)の投資引き揚げ(Divestment)を承認した。投資引き揚げ対象株には日本の国際石油開発帝石(INPEX)株なども含まれる。1機関のDivestment額としては史上最大規模となる。

 

 GPFGは運用総額1兆㌦(約110兆円)の規模を誇る。同国は3月、GPFGの資産運用ら温暖化リスクや石炭、石油・ガスなど化石燃料株の下落リスクを取り除くため、石炭産業と、石油・ガスの探査・生産を主業務とする企業株を除外すると発表していた。石油・ガス関連株は現在の保有資産全体の5.9%を占める。https://rief-jp.org/ct4/87839

 

 GPFGはDivestmentの対象企業については明示していない。しかし、これまでの投資銘柄から、石炭関連で30%以上の収益をあげている企業として Anglo-American(米)、 Glencore(スイス)、RWE(独)、Enel(イタリア)、BHPビリトン (豪)など8社の名があがっている。

 

ノルウェー議会
ノルウェー議会

 

 一方、石油・ガス製造業150社の中には、日本のINPEXのほか、出光興産、三菱石油、富士石油、K&Oエネジーグループ、東亜石油の6社も含まれているとみられる。https://rief-jp.org/ct4/87839

 

 石炭関連の8社の株引き揚げ額は総額60億㌦となり、その他の石油・ガス採掘・精製関連株の引き揚げ額70億㌦、合計130億㌦と全体の資産総額の1.3%を売却することになる。

 

 石油・ガス関連株のうち、再生可能エネルギー分野の開発に力を入れている企業株はDivestmentの対象外とする。それらの企業には、欧州系メジャーのBP、ロイヤルダッチシェル、Exxo Mobilなども含まれる。北海で操業するPremier OilやTullow Oilなどは売却対象となる。エネルギー株を再エネシフトで選別することになる。

 

 一方、石炭火力発電で年10GW以上の電力を発電している電力会社や、石炭を年200万㌧以上採掘している鉱山会社の株は引き揚げ対象となる。

 

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 今回の措置はグローバル投資対象なので、産油国ノルウェーの自国事業は投資引き揚げの対象外。開発した石油・ガスの売却代金資金で運用する政府の「State’s Direct Financial Interest (SDFI)」のポートフォリオや、同国の石油メジャー「 Equinor」の株も、対象外。

 

 一方で、売却資金の新たな投資対象として、初めて上場企業株投資以外に、再生可能エネルギー事業への直接投資を認められた。主に先進国市場での太陽光発電や風力発電事業に上限200億㌦(2兆2000億円)の投資が可能になる。

 

 ノルウェー財務省は、2030年までに世界の再エネインフラ市場の価値は、新規の太陽光発電や風力発電へのさらなる需要が高まり、現状より5割アップの4兆2000億㌦規模に拡大すると推計している。化石燃料関連株投資で引き揚げた資金の投資先として十分な市場規模があるとみている。

 

 GPFGは世界73カ国の9158社(今年3月末時点)の株を保有している。AppleやMicrosoftなどを含め、平均して世界全体の上場株の1.4%に投資している。

 

 サステナブルファイナンスなど、金融面での気候変動対策を推進する仏BNPパリバのサステナブルリサーチチームの責任者であるMark Lewis氏は「ノルウェーの今回の措置は、大規模太陽光、風力発電事業の推進者となるだろう」と歓迎している。

 

 気候変動に関する国際投資家グループ(IIGCC)の機関投資家グループ代表のStephanie Pfeifer氏は「GPFGが化石燃料投資から再エネ投資に舵を切ったことは、他の市場参加者に対する明確なシグナルを送ったことになる」と評価している。

 

 IIGCCによると、すでに8兆㌦の投資家資産が石炭産業から資金を引き揚げており、さらに11兆㌦の保有資産を運用する資産運用機関が2030年までに石炭の使用停止を呼びかけていることを明らかにした。

https://www.stortinget.no/en/In-English/

https://www.nbim.no/en/