HOME6. 外国金融機関 |米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、来年1月にTCFD勧告に沿う保有資産の気候関連金融リスクを情報開示。CalSTRSも追随へ。日本のGPIFはどうする(?)(RIEF) |

米カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、来年1月にTCFD勧告に沿う保有資産の気候関連金融リスクを情報開示。CalSTRSも追随へ。日本のGPIFはどうする(?)(RIEF)

2019-06-28 22:19:33

CalPERSキャプチャ

 

 米最大の公的年金、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の勧告に基づいて保有資産の気候関連情報を来年1月に開示する方針を明らかにした。同州では、CalPERSとカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)に対し、気候関連情報開示を求める法律が成立している。

 

 昨年9月成立した州法「SB964」は、同州の二つの公的年金基金が保有する資産のうち、気候関連の金融リスクを2035年までの間、3年ごとに開示することを義務付けた。両年金合計の資産額は6000億㌦(約66兆円)に達する。

 

 CalPERSはこの州法に基づく気候関連金融リスクの開示を、TCFDの勧告に沿った内容として実施する方針を明らかにした。もう一方のCalSTRSはまだ情報開示のスタンスを公表していないが、CalPERSと同様に対応するとみられる。

 

 公的年金としては両年金を上回る資産規模の日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、気候変動金融リスクの法的開示義務は課されていない。だが、「ユニバーサル・オーナー」としてのGPIFにも、気候変動リスク開示の先導性が求められる。

 

TCFD無題

 CalPERSがTCFD勧告に沿った情報開示方針を打ち出す背景には、「Fossil Free California」など5つの環境NGOが両年金に対して、保有ポートフォリオが抱える気候関連金融リスクの早期開示を要請してきたことがある。

 

 NGOらは、今年1月に破産法を再申請した同州の電力会社、パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社(PG&E)が、気候変動による山林火災で送電線が損失するなどの影響から企業破綻に至ったことを重視。公的年金の投資資産にも気候リスクが影響していることを指摘した。

 

 またNGOらは、州法に基づく気候関連金融リスクの開示について、「完全性と適格性(Completeness & Adequacy)」が求められると指摘。TCFDの勧告に基づく保有資産の詳細な分析を要請した。

 

  こうした要請に対して、両年金のうちCalPERSのスポークパーソンは「われわれはSB964が求める必要条件を満たすべく報告書を準備している。同時に、その報告書はTCFDの勧告に適合したものとするつもりだ」と述べた。NGOらは気候変動リスクのある具体的な保有株の公表も求めたが、それについては同スポークスパーソンは明言していない。

 

 CalSTRESキャプチャ

 

 CalPERSがTCFDの勧告に沿った気候関連金融リスク開示をする場合の焦点は、2.0℃、1.5℃の両シナリオ分析に基づいて保有資産の見直しをする際に、気候関連リスクが高くて、投資引き揚げ(Divestment)の評価を受ける銘柄がどれくらい発生するかという点だ。

 

 一方、CalSTRSのスポークスパーソンは「CalSTRSはこれまで、Green Initiative Task Forceに基づく環境テーマ型投資や環境リスクマネジメントに関する情報開示を10年以上続けている。SB964の情報開示は、こうしたCalSTRSの投資ポートフォリオが抱える気候変動リスクの負の影響を可視化し、低炭素経済へのCalSTRSの貢献も示すことになる」と強調している。