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スイスのチューリッヒ保険、世界の気温上昇「1.5℃目標」抑制を目指す国連「Pledge」に保険会社として初署名。保険引き受け、投資先に温暖化対策求める。自らも再エネ100%公約(RIEF)

2019-07-01 07:35:44

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 スイスの大手保険、チューリッヒ保険グループは、世界の気温上昇を産業革命前からの1.5℃以内に抑制することを目指す国連グローバルコンパクトの「Business Ambition Pledge」に保険会社として初めて署名した。また事業で使用する電力を2023年までに100%再生可能エネルギーに切り替える目標も設定した。

 

 チューリッヒ保険が署名したグローバルコンパクトの「Pledge」は、2030年までに世界の気温上昇を1.5℃未満に制限することを産業界として誓約する活動だ。同署名を受け、同社は今後2年間、保険契約顧客や投資先企業に対して、石炭、オイルサンド、シェール油等への投資を削減する活動支援を求めていくとしている。

 

 グローバルコンパクトのPledgeは、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年公表した1.5℃報告を支持するもの。同報告では、世界は気候変動の大きな影響を避けるための「1.5℃目標」を達成するには、残り11年しかないと警告している。同Pledgeへの署名は、「直ちに行動し、大規模な転換を実施する」ことを意味する。

 

 チューリッヒ保険のCEO、Mario Greco氏は「世界の大手保険会社の一つとして、われわれは自然災害被害が人々やコミュニティに直接影響を及ぼしていることを目の当たりにしている。このことが、気候変動に対応する行動の加速を目指す理由だ。やらねばならないことなのだ」と述べている。

 

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 同社は、「1.5℃」目標の重要性は、CO2排出削減をより多く、より迅速に進めることで、パリ協定の目標達成を満たすことにある、とIPCCの報告の重要性を強調している。ただ、現在の保険業界全体では、同目標を明確に保険引き受けや投資ポートフォリオ等に紐づける形にはなっていない。

 

 その中でのチューリッヒのPledge署名は、保険ビジネスでのカーボンフットプリントの負債を測定する技術発展に貢献するとの期待もある。チューリッヒは、金融機関がパリ協定に合致した投融資ポートフォリオを促進する「Science Based Target Initiative」のStakeholder Advisory Groupにも参加している。

 

 同社は、Pledge署名に伴う投資先、保険引き受け先への支援行動として、化石燃料関連取引が30%を超える企業等に対して、直接対話を進め、取引内容の転換や長期的な移行(Transition)計画立案等を求めていくとしている。

 

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 Pledgeに基づき、取引先へ働きかける直接対話の対象は以下の通り。

 

 ▼石炭鉱業からの収入が30%鉱山からの収入が30%以上あるいは、年間2000万㌧以上の石炭を生産している企業。

 

 ▼使用する電力の30%以上が石炭火力発電に依存している企業。

 

 ▼新規の石炭鉱業、石炭火力事業開発に取り組んでいる企業。

 

 ▼収入の少なくとも30%以上を、オイルサンドからの石油抽出事業から得ている企業。

 

 ▼パイプラインや鉄道輸送分を含むオイルサンド生産に関する輸送インフラ事業を目的とする事業。

 

 ▼収入の30%以上がシェール油生産による企業。

 

 ▼使用電力の30%以上がシェール油から生産されている企業。

 

 チューリッヒ保険自身のCO2排出量を削減するため、2022年までに再エネ電力100%に切り替え、国際活動の「RE100」に参加する。さらに、廃プラスチック問題でもイニシアティブを発揮し、使い捨てプラスチックの使用を減らすほか、内部での紙の使用量を80%削減するとしている。

 

 チューリッヒは2012年に、ESG要因をコアビジネスの中に取り入れ、2014年にはカーボンニュートラルを実現している。

 

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