HOME |年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、欧州投資銀行(EIB)のグリーンボンド等へ投資を拡大。欧米機関投資家に比べ低いグリーン資産比率の引き上げ目指す(RIEF) |

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、欧州投資銀行(EIB)のグリーンボンド等へ投資を拡大。欧米機関投資家に比べ低いグリーン資産比率の引き上げ目指す(RIEF)

2019-07-03 11:56:19

GPIFキャプチャ

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、グリーンボンド、サステナビリティボンドへの投資に本腰を入れ始めた。このほどGPIFの運用委託機関が、欧州投資銀行(EIB)が発行するグリーンボンド(Climate Awareness Bond)へ投資できる道を開いた。グリーン投資、ESG投資の実績拡大を目指す。

 

 GPIFは、4月にも世界銀行グループ発行のグリーンボンドへの投資も運用委託機関に認めている。委託機関はすでに5億㌦分の投資を実施している。

 

 GPIFはESG投資を柱の一つに掲げている。これまでに、2017年7月に環境だけでなくESG要因全体に照準を合わせた総合型の指数運用を実施、さらに昨年8月には、炭素効率性が高い企業とCO2排出量などの情報開 示を行っている企業を選んだカーボン・エフィーシェント指数に基づく内外株投資も実施している。

 

 しかし、総資産160兆円という規模だけに、これまでのグリーン、ESG関連投資を合わせても、全体の資産額の2%前後でしかない。一方、欧米の年金等は、グリーン投資を拡大、さらにEUでは非財務情報の義務的開示も進んでいる。

 

 米国でもGPIFが参考にするカリフォルニア州職員退職金年金基金(CalPERS)や同州教職員退職年金基金(CalSTRS)などは、来年1月からESG投資の情報開示義務化が決まっている。また日本でも気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく情報開示の準備が進んでおり、GPIF自体も投資資産の「グリーン度」が問われる状況だ。

 

 今回のEIB発行のグリーンボンド、サステナビリティボンドへの投資拡大は、こうした背景に基づいて、よりグリーン性の高いEIBのCAB(気候ボンド)も投資対象に組み込もうという判断とみられる。EIBはCABを定期的に発行していることから、同債券は流動性も高い。

 

 ただ、グリーンボンド市場では、発行量も増えてはいるが、欧州系の年金基金を中心に投資需要も高い。信頼性の高いグリーンボンドだと、発行額の数倍の競争率になるのもザラだ。日本のグリーンボンド市場は昨年は前年比5割増となった。だが、まだ発行市場の規模は小さく、GPIFが本格参入すると一種のクラウディングアウト(公的機関が民間資金を吸い上げる)を引き起こすリスクもある。

 

 そのため、GPIFは当面は、市場規模の大きいEIBや世銀等の国際公的金融機関発行のボンドを対象とする判断とみられる。一方で、日本の年金資金だけに、国内のグリーンファイナンス市場を育成し、日本企業や日本の環境に資金還元する期待もある。GPIFのグリーン投資、ESG投資は、立ち上がりの「掛け声」の段階から、投資の実効性が問われる段階に移りつつあるといえる。

https://www.gpif.go.jp/investment/esg/eib.html

https://www.gpif.go.jp/investment/esg/gpifesg.html