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アジア開発銀行、事実上の「脱石炭ファイナンス」明確に。経済的理由と、一般的な懸念の広がりを指摘。天然ガス、再エネ発電等に注力。インドネシアの担当責任者が明言(RIEF)

2019-08-12 23:45:35

Indonesia1キャプチャ

 

   アジア開発銀行(ADB)が、インドネシアなどでの石炭火力発電事業には距離を置き、天然ガス火力や再生可能エネルギー投資にシフトする姿勢を強調した。同行の幹部が明らかにした。石炭火力事業をファイナンスの対象としない理由として、経済的要因と石炭火力への一般的な懸念の広がりをあげている。

 

 (写真は、ジャワ島中央部・ジェパラの石炭発電所=Greenpeace)

 

 ADBのプライベートセクターオペレーション部門のインドネシアの責任者、Yuichiro Yoi氏が現地の新聞(Jakarta Post)に対して答えた。同紙は、ADBの責任者による説明を「世界中の多くの金融機関の石炭からのガス・再エネへの転換の動きにADBも参加した」と評価している。

 

 Yoi氏は、首都のジャカルタで開いたガス展示会の場で、インタビューに応じ、「世界は石炭から離れている。この動きを私は変えたり、否定したりすることはできない。(石炭離れは)世界の多数のセンチメントであり、われわれはそれに沿う以外ない」と語ったという。

 

ADBキャプチャ

 

 さらに、「石炭火力発電所が『座礁資産(Stranded Asset)』になると、それは信用リスクになる。今後、石炭関連の事業に関与するのはより難しくなるだろう。石炭関連事業に関わることでレピュテーション(評判)を心配するだけでなく、投資損のリスクを心配しなければならない」と語った。

 

 この点は同氏が「経済的理由」と指摘する点である。機関投資家にとって、石炭火力事業等は、将来の投資リターンが減損するリスクがあるということだ。また発電効率でも、再エネ事業が急速にコストが低下し、競争力を高めている。

 

 国際的な非営利シンクタンクの 「Institute for Energy Economics and Financial Analysis (IEEFA)」が2月に公表したレポートによると、世界の上位40位のグローバル銀行と20のグローバル機関投資家の40%を含む100以上のグローバル金融機関が、石炭関連事業を投資引き揚げ対象としているという。

 

 これらの金融機関は、化石燃料関連の企業への投資にも次第に、慎重になっている。化石燃料自体がビジネスとして持続可能ではなく、環境への負の影響を制限することを求める市場の圧力が増大している点等を、慎重な判断の理由としている。

 

 Yoi氏は、ADBは石炭政策について明文化した方針はまだ示していない、としている。その一方で、ADB自体のこれまでの経験から、石炭関連プロジェクトをADB内部で事業として評価されることは非常に難しい、と説明した。同氏はインドネシアの責任者だが、この「脱石炭」方針は、同国だけに適用されるのではなく、ADB全体の事実上の方針になっているようだ。

 

 さらに同氏は、「もし仮に、石炭火力発電事業にファイナンスをするという機会が(ADBに)あるとするならば、石炭火力をファイナンスすることのネガティブな影響度を上回る『良い説明(good story)』が必要だ」とも指摘した。「良い説明」とは、CCS(CO2回収・貯留技術)の併用などを想定できる。

 

 実際、ADBはインドネシアでは、天然ガスと再エネ事業、特に地熱発電等にしかファイナンスをしていない。これまでのADBの同国での累積投資総額は、73億㌦(約7600億円)に達し、プロジェクト件数も102件と100件台にのせている。

 

http://ieefa.org/adbs-yoi-development-bank-backing-away-from-new-coal-investments-in-indonesia/