HOME9.中国&アジア |東南アジア6カ国の主要銀行、サステナブルファイナンス対応は不十分。「新規石炭火力向け融資停止」「反森林伐採方針」の明確化は、35行中シンガポールの3行だけ。WWF調査(RIEF) |

東南アジア6カ国の主要銀行、サステナブルファイナンス対応は不十分。「新規石炭火力向け融資停止」「反森林伐採方針」の明確化は、35行中シンガポールの3行だけ。WWF調査(RIEF)

2019-08-23 23:21:27

WWF12キャプチャ

 

   東南アジアの主要銀行の大半が、石炭火力発電や森林伐採などの「反持続可能な」事業へのファイナンスを続けているとの報告が公表された。対象の各国の主要35行のうち、32行は現在も新規の石炭火力発電事業に融資を続けている。「石炭火力融資停止」と「反森林伐採方針」を明確にしているのはシンガポールの3行だけ。

 

 報告はWWFがまとめた「2019 Sustainable Banking Assessment (SUSBA) 」。対象となったのは、東南アジアのベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール6か国の主要銀行35行。各行をESGの6分野(Purpose, Policies, Processes, People, Products, Portfolio)の70のクライテリアで評価した。

 

調査対象となった35の銀行
調査対象となった35の銀行

 

 その結果、全クライテリアの少なくとも半分に適合した銀行は、シンガポールの3行(DBS、OCBC、United Overseas Bank)とタイのカシコン銀行(K Bank)だけ。半分の51%の銀行が適合したクライテリアは4分の1以下だった。ただ、前年と比べ、改善した銀行は74%あった。

 

 このうち、シンガポールの3行は、新規の石炭火力発電事業向けファイナンスの禁止や、森林伐採の禁止等を明確にし、サステナブルファイナンスでは東南アジアのリーダー格として位置付けられる。


  
 ただ、シンガポールの3行も含め全対象行が、顧客に対して水リスクアセスメントの実施を要求する体制をとってない。シンガポール各行は、気候変動リスクの抑制管理あるいは、気候リスクアセスメント戦略を発展させてきている、としている。

 

 WWFシンガポールのアジアサステナブルファイナンス担当のJeanne Stampe氏は「全体的に銀行は気候変動を課題としてとらえているが、実際に投融資戦略に組み入れているところは極めて限られる。相対的に改善はみられるが、最善の銀行と最悪の銀行のギャップはむしろ拡大している」と指摘している。

 

東南アジア各国の気候変動対策の動向
東南アジア各国の気候変動対策の動向

 

 ESG対応が不十分な東南アジア各国の銀行だが、一方で、気候変動対応の移行リスクに直面している。たとえば、マレーシア、シンガポール、タイの3カ国の中央銀行は、金融システムのグリーン化を推進する「Network for Greening the Financial System (NGFS)」に参加しているほか、地域の7つの銀行協会は年末までにサステナブルファンキングのガイドラインを公表するとみられる。

 


 東南アジアでのグリーン投資需要は、2016年から2030年までの間で累計3兆㌦との試算がある。対象セクターは、インフラ、再生可能エネルギー、エネルギー効率化、食糧、農業、土地利用を含む。ただ、今回の調査対象の銀行の51%は、再エネファイナンスには取り組んでいるが、他のグリーン投資セクターへの取り組みとの間で大きなギャップがある、としている。

 
https://d2ouvy59p0dg6k.cloudfront.net/downloads/wwf_sustainable_finance_report_2019.pdf