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ハリケーン、森林火災等の自然災害被害の増大で、来年1月の再保険料率平均で最大5%引き上げの見通しも。現在米国に近づいているハリケーン・ドリアンの影響に注目(RIEF)

2019-09-03 22:23:44

Dorianキャプチャ

 

 米国のハリケーンや日本の台風・集中豪雨、さらに米カリフォルニア州での山林火災などの影響で、世界全体の再保険料率が来年1月には最大で5%アップになるとの予測が出ている。米国では現在、大規模なハリケーン・ドリアンが接近しており、その影響によってはさらに被害が拡大、再保険料にも反映しそうだ。

 

 (写真は、米国に接近中のハリケーン・ドリアンの状況)

 

 今年1月の再保険料率の増加率は1~2%。来年は最大5%増と見込むのは米格付機関のS&P。世界の自然災害被害は、2016年までは相対的に減少傾向だったのと、再保険各社の競争の影響もあって、再保険料はほぼ横ばい状態だった。

 

 だが、2017-18年と2年続けて災害発生が増大、その結果、最大の保険市場である米国での保険・再保険料の負担増大傾向が続いている。米国の被害は南東部でのハリケーン被害、西部での森林火災・地震被害が中心。17、18年は地震被害以外の各災害がいずれも大きなダメージを米社会に与えた。http://rief-jp.org/ct8/86538

 

 17年のハリケーン・ハービー、イルマ、マリアの襲来は、米国だけでなく、メキシコ、カリブ海地方に大きな被害を引き起こした。18年もハリケーン・マイケルが襲来、フロリダが洪水になった。

 

 世界的な熱波・乾燥の影響は米カリフォルニア州での山林火災の猛火をあおった。17、18年に高まった火災の影響で、電力・ガス大手PG&Eは今年初め、経営破たんし、米連邦破産法11条の適用を申請した。

 

カリフォルニア州の山火事
カリフォルニア州の山火事

 

 米国だけではない。毎年のように集中豪雨被害が続く日本では、17年の九州北部豪雨、18年の西日本全域の豪雨、さらに今年も九州で豪雨が続いた。欧州や豪州では熱波被害が毎年発生、高齢者の死者増加や、農産物被害等も拡大している。

 

 来年1月の再保険料引き上げ率について、別の格付機関のFitchは少し控えめで、今年1月並みの1~2%増とみている。ただ、同社も、今回のハリケーン・ドリアンの影響によっては、再保険率引き上げ率は、さらにアップするとの見方で一致している。

 

 ロイターによると、先週、モンテカルロで開いた再保険関係企業の年次会合で、S&P GlobalのリードアナリストのAli Karakuyu氏は「現在の再保険市場は『hard market(困難な市場)』とまではいっていないが、『hardening market(困難が深まりつつある市場)』だ」と形容した、と伝えられる。

 

 再保険料率が上がり過ぎると、原保険契約の引き受け料率にも影響が及ぶ。「保険ー再保険」の保険市場機能が十分に働かない場合は、保険契約を資本市場に直接つなぐCatastrophe Bonds(Cats Bonds)などの市場が活況になる可能性もある。ただ、個人の損害保険料率の引き上げは避けられない。

 

 自然災害の影響増大を重視するS&Pは、気候変動に連動した天候不全の影響は今後さらに増大するとみている。先進国市場では固定資産に対する保険付与が普及しており、被害が発生すると保険会社の支払額も増大する。S&Pは今後、保険料率は30~70%の水準で引き上げられる可能性を示唆している。

 

https://www.reuters.com/article/reinsurance-prices-sp/reinsurance-prices-seen-up-around-5-in-2020-sp-global-idUSL5N25U1NI

https://www.space.com/hurricane-dorian-astronaut-photos-zoom-in.html