グローバルな環境NGO、国連の責任銀行原則(PRB)署名銀行の「言行不一致」を批判。典型的な8銀行を名指し、うち3行は日本勢。PRB自体にも「グリーンウォッシュ隠し」の懸念表明(RIEF)
2019-09-24 07:38:42
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が責任銀行原則(PRB)を発足させたことを受け、国際的な環境・社会NGOは、PRBを歓迎する一方で、署名銀行の中に、石炭火力関連企業や熱帯林破壊等に関与する企業へファイナンスをしている「言行不一致銀行」があると指摘。8銀行を名指しした。その中の3行は日本の3メガバンクだ。
PRB署名銀行の「言行不一致ギャップ」を調べたのは、BankTrack、グリーンピース、Rainforest Action Network(RAN)など22機関。
その結果、「言行不一致」と名指しされた銀行は、米シティーグループ、中国工商銀行(ICBC)、英バークレイズ銀行、マレーシアのCIMB、フランスのBNPパリバ、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の8銀行グループ。
たとえばシティーグループは、化石燃料セクター全体への資金提供(2016-2018年が1295億㌦)で世界第3位、石炭火力企業上位30社への資金提供 (2016-2018年で44億㌦)で世界5位、アマゾンの森林破壊関連産品の取引業者への主な資金提供者、と位置付けられている。
中国工商銀行(ICBC)は、石炭火力企業上位30社向け資金提供で世界2位。東南アジアでの紙パルプ企業への資金提供 で世界3位。主に泥炭地破壊、森林火災、社会紛争、違法行為、汚職に関係がある企業向け融資を抱える。
日本の3メガバンクは、MUFGがパーム油企業向け融資で日本でトップ(2013~18年22億㌦)であるほか、化石燃料セクター全体への資金提供7位(2016~18年、800億㌦)、石炭火力上位30社向け資金提供で世界6位。
みずほは、東南アジアの森林リスク産品企業への資金提供 (2013~2018年が30億㌦)で世界3位。化石燃料セクター全体への資金提供(2016~2018年が677億㌦)で世界10位。石炭火力企業上位30社向け資金提供で8位。
SMFGは、東南アジアの森林リスク産品企業への資金提供 (2013~2018年が45億㌦)で世界1位。違法行為、森林破壊、搾取に関係がある問題企業向け融資を含む。また北極圏の石油・ガス企業上位30社とLNG輸出ターミナル上位30社への資金提供で世界3位など。
環境NGOの一つRANは、「現在の日本の4銀行(三井住友信託銀行を含む)の資金提供、特にメガバンクによる資金提供は、グローバルなイニシアティブであるPRBと明らかに矛盾している。メガバンクによる化石燃料企業や熱帯林を破壊する企業への資金提供、特に東南アジアにおける石炭火力とパーム油への多額の資金提供は、気候危機と自然環境の前例のない悪化を促進している」と批判している。
そのうえで、「PRB署名の公約を果たすには、化石燃料の拡大や、森林破壊または泥炭地破壊を引き起こす事業への資金提供を直ちに停止し、『1.5℃目標』に合致するため、化石燃料セクターと森林リスク産品セクターへの資金提供の段階的廃止を約束し、国連のビジネスと人権に関する指導原則の全ての要件を満たすことで事業全体を通して人権と先住民の権利を尊重することが必要」と指摘している。
さらに、グローバルな環境NGOらは、PRBの創立に参加した30銀行には同原則の導入計画を打ち出す時間が十分にあったにもかかわらず、「これまでのところ、多くのPRB銀行は具体的な計画や誓約の公表していない」点に懸念を示している。
またPRB自体も、署名銀行に対して、野心的かつ具体的な計画と目標の提示を署名に際して求めていないほか、署名銀行は4年以内に原則の実施を証明すればよいという猶予期間を設けている点にも疑問を示している。「このような期間設定は、30年前であれば許容されたかもしれないが、今の時代には全くそぐわない」。
「PRB署名銀行を含む、金融セクターの大多数が地球環境の破壊や重大な人権侵害を加速させているという事実が覆い隠され、PRBもまた、環境・社会に配慮しているかのように見せかけた「グリーンウォッシュ」の手段となる恐れがある、と警告している。
https://view.monday.com/286051916-ceed60740ab2fac4163f861f324c3b8c