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GRI、SASBなど非財務情報開示機関で構成するプラットフォーム(CRD)が相互適合報告書(BAP)開示。TCFDとの整合性を強調。相互の統合化については言及せず(RIEF)

2019-10-01 23:42:52

1CRDキャプチャ

 

 国際統合報告評議会(IIRC)やサステナブル会計基準審議会(SASB)などの企業情報の基準設定機関で組織する「Corporate Reporting Dialogue(CRD)」は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)勧告と、各機関のフレームワークとの整合性を整理した報告書を公表した。基本的にはいずれもTCFD勧告との整合性が高い割合になっているとの内容だが、非財務情報開示全体の統合化については十分に踏み込んでいない。

 

 CRDは2018年から各機関の開示フレームワークと、TCFD勧告との整合性を評価する「Better Alignment Project(BAP)」を開始、今回がその最初の報告で、「Driving Alignment in Climate-related Reporting」と題している。

 

 CRDには、IIRCとSASBのほか、気候情報開示のCDP、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、気候情報開示基準機構(Climate Disclosure Standards Board :CDSB)の5機関と、オブザーバーとして、国際会計基準審議会(IASB)、米連邦財務会計基準審議会(FASB)、国際標準化機構(ISO)が参加している。https://rief-jp.org/ct6/91478

 

CRD2キャプチャ

 

 財務会計の基準としては国際的にはIASBとFASBが並列しており、両機関は密接な調整を重ねている。これに対して、非財務情報の各機関は、主要な5機関だけでも、相互に基準評価の違いや力点のバラつき等が指摘され、情報開示をする企業側から不満が漏れている。

 

 これらの機関はいずれも自主的な機関だが、2016年に金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が勧告を公表して以来、各機関の気候関連の情報開示の枠組みが、TCFD勧告と整合しているかどうかが焦点となってきた。

 

 そこで、CRDはIASB等のオブザーバーも動員して、2年がかりのプロジェクトBAPで、TCFDとの整合性を整理することとした。

 

 今回の報告では、①TCFDが効率的な情報開示のために示す7原則にいずれのCRD機関のフレームワークも調和がとれ、補完的で、矛盾はない②各機関はTCFDが推奨する11の具体的な情報開示案と十分に整合している③CDP、GRI、SASBの3機関はTCFDが示す50の測定基準のほぼ80%をすべてか、あるいはかなりカバーしている④CDP等3機関の指標は、TCFDの測定基準と70%は本質的に変わらない。異なる指標も本質的な違いは限定的ーーと結論付けている。

 

 TCFDの効率的情報開示の7原則は①適切な情報を提供する(Present relevant information)②具体的な内容ですべてを開示(Be specific and complete)③明確で、バランスが取れ、理解し易い(Be clear, balanced, and understandable)④長期にわたって矛盾しない(Be consistent over time)⑤セクター、産業、ポートフォリオにおいて企業同士で比較可能(Be comparable among organisations within a sector, industry, or portfolio)⑥信頼され、検証され、客観性がある(Be reliable, verifiable, and objective)⑦タイムリーなベースで情報供給される(Be provided on a timely basis)--というものだ。

 

 一方、TCFDが推奨する11の具体的な情報開示案は、TCFDが中核要素として示すガバナンス、戦略、リスクマネジメント、測定基準(指標)とターゲットごとに、具体的な開示対象を提言しているモノを指す。たとえば、ガバナンスでは、「気候関連のリスクとオポチュニティに対する取締役会の監督体制の記述」、戦略では、「企業・機関が抱える短期、中期、長期に評価する気候関連リスクとオポチュニティの記述」等となる。

 

 基本的に今回のBAPではTCFDと各非財務情報機関のフレームワークとの整合性が強調された形だが、国際的な非財務情報開示基準(International Non-financial Reporting Standards: INFRS)を求める市場の声には十分に答えた形にはなっていない。

 

 財務基準のIASBは、非財務情報について は財務情報報告書の中の「Management Commentary Statement Practice」を改定して記載を推奨する方針だが、INFRSには消極的とされる。むしろ、IASBの議長ハンス・フーガーホースト( Hans Hoogervorst)氏は、非財務情報機関の統合化を提案している。

 

 ESG、サステナブルファイナンス、TCFD等の先端の動きばかりが市場で持てはやされている。だが、基本となる非財務情報開示の信頼性が担保されないと、ESGもサステナブルファイナンスも根っこが不安定なまま、流されるリスクもある。ABPの2年目の分析と提言が、どこまで踏み込んだものになるか。各非財務情報機関の責任者たちが自分の足元だけではなく、非財務情報の領域(および財務情報との接点も)を包括的にとらえる視点を持っているかどうかだろう。

https://corporatereportingdialogue.com/corporate-reporting-dialogue-shows-high-level-of-alignment-between-major-global-reporting-frameworks-on-tcfd-recommendations/

https://corporatereportingdialogue.com/wp-content/uploads/2019/09/CRD_BAP_Report_2019.pdf