HOME8.温暖化・気候変動 |カナダの世界最大シャトルタンカー会社が、石油・ガス用タンカーの新造資金調達で、グリーンボンド1億5000万㌦発行へ。化石燃料事業への投資だが、CO2排出量は半減。「グリーンかどうか」の議論に(RIEF) |

カナダの世界最大シャトルタンカー会社が、石油・ガス用タンカーの新造資金調達で、グリーンボンド1億5000万㌦発行へ。化石燃料事業への投資だが、CO2排出量は半減。「グリーンかどうか」の議論に(RIEF)

2019-10-04 15:31:46

Teekay1キャプチャ

 

  カナダの世界最大のシャトルタンカー会社のTeekay Shuttle Tankersが、石油・ガス輸送用のタンカー建設資金調達のため、1億5000万㌦(約162億円)のグリーンボンド発行を決めたことで、グリーンボンド関係者の間で議論が起きている。化石燃料輸送のタンカーの建設費が「グリーンか」どうかという点だ。一方で国際海事機構(IMO)は2050 年までに国際海運でのCO2量を半減(2008年比)する目標を立てている。「グリーンなタンカー」は選択肢なのかどうか。

 

 Teekayは洋上開発で採掘された石油・天然ガスを、開発用リグから直接、タンカーに積み込み、精製地等にまで往復輸送するシャトルタンカー便を世界中で展開している(船籍はバミューダ)。従来のパイプライン方式よりも経済的にも、運送の利便性でも高いことから、普及が進んでいる。

 

 同社は今回、国際的な海運事業のCO2規制に対応するため、省エネ型の新造タンカー「E-シャトル」の建設資金をグリーンボンドで調達することを決めた。E-シャトルは、従来型のタンカーに比べてCO2排出量が年間42%少ないほか、燃料消費量も22%少ない。またCO2だけでなく、硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量もそれぞれ95%、80%以上、削減されるという。

 

 2020年中にTeekayに納入される予定。ボンドの資金使途はCO2排出量の多い石油・天然ガスという化石燃料の輸送手段の建造費だが、新造タンカーの輸送中のCO2排出量等の環境改善効果は高い。グリーン性のセカンド・オピニオンを担当したのは、ノルウェーの評価会社のCicero。

 

Ciceroキャプチャ

 

 同社は「TeekayのE-シャトルは短期的にはCO2排出量を削減するが、将来的な低炭素化、気候レジリエントに対して長期的な解決法を提供するものではない」とのコメントをつけて、同社が提供する3段階のグリーン評価で、もっとも薄い「Light Green」を付与した。

 

 同ボンドの主幹事は、Danske Bank(デンマーク)、 DNB Markets(ノルウェー)、 Nordea(フィンランド)、Skandinaviska Enskilda Banken AB (スウェーデン)の北欧各国の銀行が引き受けた。投資先も北欧の年金基金等が中心とみられる。

 

 Skandinaviska Enskilda Banken AB の気候・サステナブルファイナンス部門責任者のChristopher Flensborg氏は「市場の反応は交錯している。投資家がこのボンドは彼らの適格投資だと判断するかどうかだ。われわれはこうした投資をめぐる議論が起きることを、むしろ歓迎する」と述べている。

 

 グリーンボンドをめぐっては、これまでも資金使途が本当に「グリーンかどうか」で議論が起きてきた。特に中国では、クリーンコールと称して、超臨界圧石炭火力や超々臨界圧石炭火力発電事業向けの資金使途もグリーンボンドの対象にしている。また、低炭素経済社会への移行を促す移行ボンド(Transition Bond)の議論も台頭している。

 

https://www.teekay.com/investors/teekay-tankers-ltd/news-releases/

https://www.cicero.green/latestnews/2019/10/3/why-we-need-all-sectors-to-contribute-to-a-global-transition-to-green