HOME8.温暖化・気候変動 |英イングランド銀行カーニー総裁、来年のCOP26のため、国連の「気候行動とファイナンス」特別大使に就任。TCFD提言に基づく気候対策への民間資金の流れ確保の「知恵袋」に(RIEF) |

英イングランド銀行カーニー総裁、来年のCOP26のため、国連の「気候行動とファイナンス」特別大使に就任。TCFD提言に基づく気候対策への民間資金の流れ確保の「知恵袋」に(RIEF)

2019-12-02 12:20:48

Carney112キャプチャ

 

  国連のアントニオ・グテレス事務総長は1日、英イングランド銀行のマーク・カーニー総裁を国連の「気候行動とファイナンス」の特別大使に指名した。カーニー氏は来年11月に、英国グラスゴーで開催する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)のための事務総長の気候戦略をサポートする。

 

 2日からスペイン・マドリードで始まるCOP25では、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が来年から始まるのを前に、実施に必要なルールの合意を目指す。来年のCOP26はそうした合意を受けて、特に途上国向けの対策資金を本格的に供給するためのファイナンスの役割強化が求められる。



 カーニー総裁は、来年1月に総裁を退任する予定。気候変動リスクが金融システムに及ぼす影響を把握することを提言したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を、金融安定理事会(FSB)議長時代に主導するなど、金融の視点から気候リスクを位置付ける役割を果たしてきた。

 

 国連は、COP25からCOP26にかけて、パリ協定を本格的に実施するフレームワークを稼働させるうえで、中心になる民間の金融市場の資金を気候対策に誘導するための知恵を同氏から得たい考えのようだ。

 

  国連の気候変動担当特別大使はこれまでマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が務めていた。だが、同氏は2020年米大統領選の民主党候補への指名争いに出馬を表明し、11月に特別大使を辞任している。ブルームバーグ氏はカーニー氏と連携する形で、TCFD議長を務めた経緯がある。

 

  民間金融市場が気候リスクを把握、評価し、途上国の温暖化対策に投融資資金を投じるには、企業・金融機関が保有する気候リスクを開示する情報開示制度の確立、気候リスクを盛り込んだリスクマネジメント、金融機関の判断決定に温室効果ガス排出量ネット・ゼロに向かう移行期(Transition)を支援する経営判断等が求められる。

 

 カーニー総裁は次のように述べている。

 

「国連事務総長からCOP26に向けての依頼を受け、誇りに思う。温暖化対策のため金融の役割を高めるには、移行期からネット・ゼロ経済に至る間に生じる気候関連リスクとオポチュニティを、金融機関の政策決定の中心に据えるプラットフォームを提供する必要がある」

 

「そのためには、気候リスクの情報開示は総合的でなければならず、気候リスクマネジメントは金融全体に展開されねばならず、ネット・ゼロに向けた投資は金融の主要業務でなければならない。イングランド銀行と英政府、英金融セクターは、これらの条件を推進する役割を果たす準備がある」

 

 イングランド銀行はすでに、気候リスクによる金融システムへの影響を把握・対応するために、世界の中央銀行や金融監督当局で構成する「Network for Greening the Financial System(NGFS)」と「Sustainable Insurance Forum(SIF)」の中心メンバーとして活動している。国連事務総長との連携は、NGFSやSIFなどの実務的協議と連携する形で進められることになりそうだ。

 

 イングランド銀行理事会の議長を務めるBrad Fried氏は「総裁が国連の特別大使の使命を受けたのは、これまで彼が推進し、同時にイングランド銀行が果たしてきたグローバルな活動を証明するものだ。われわれは、カーニー氏が総裁の座を退任した後もこうした役割を続けることを歓迎する」としている。

 

https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/news/2019/december/mark-carney-named-united-nations-special-envoy-for-climate-action-and-finance.pdf?la=en&hash=D0A009B457635795C36432C799088E6990D2249D