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グローバルな銀行の人権対応、5行に4行は「不合格」。国際NGOが国連「ビジネスと人権の指導原則」への対応状況をスコア化。一位はABMアムロ(蘭)、日本勢は下位に低迷(RIEF)

2019-12-05 08:12:24

BakTrack1キャプチャ

 国際NGOのBankTrack(オランダ)は、グローバルな主要銀行を対象とした「人権ベンチマーク」調査を公表した。国連「ビジネスと人権の指導原則」への適合を評価したもので、 ABMアムロ(オランダ)が最も高いスコア。対象50行中、合格ラインは10行だけで、5行中4行が不十分な対応とされた。日本勢は2行が「Followers(追随者)」、2行が「Laggards(落伍者)」だった。

 BankTrackの評価は50行を対象とし、「指導原則」が求める必要条件を元に、人権対応の経営政策でのコミットメント、人権評価のデューデリジェンス(HRDD)プロセスの設定、人権に関するレポーティング、改善のためのアクセス・アプローチの4分野について、14のクライテリアを設定、スコア化した。

  14点満点での最高点は、ABMアムロの9.5点。唯一、「Leaders」のランクに入った。次いで、6.5~9点の「Front runners」が同じオランダのラボバンク、同INGバンク、米シティ、英バークレイズなど9行。合格はここまで。3.5~6点の「Followers」が19行。この中に、日本の三井住友信託銀行(4点)、みずほフィナンシャルグループ(同)の2行が入った。

 bankTrack3キャプチャ

 0~3点の「Laggards」は21行。米ゴールドマンサックス、Bank of America、仏Société Généraleなどの有名銀行とともに、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループが並んだ。両行ともスコアは2点。中国の農業銀行、中国銀行、建設銀行の3国営銀行は零点で最下位だった。

 調査は3年前(2016年)にも実施しており、平均点を比べると、3年前は28.3%(100%比)、今年はほんの少し改善して28.5%。スコアを上げた銀行は12行、下げた銀行も同じく12行だった。特にスコアを3ポイント以上改善した銀行は、BBVA(スペイン:4ポイント)、Morgan Stanley(米:同)、Standard Chartered(英:同)の4行。

 国別では、首位となったABMアムロのほか、「Front Runners」にも2行が入ったオランダ勢の健闘が目立つ。BankTrackがオランダ拠点だからというわけではない。オランダでは政府と金融界が共同で「人権に関するオランダ銀行セクター協定」を結んでおり、銀行業界ぐるみで人権対応が進めてきた成果が出たといえる。

 Banktrack2キャプチャ

 同協定は、効果があがらないと法規制に転じられる可能性があるため、銀行業界の対応も真剣度が違うようだ。銀行に実効性のある人権対応をとらせるには、直接あるいは間接を問わず、法規制のインパクトが必要との見方もある。英国は最近、現代奴隷法を、フランスは環境・人権の「デューデリジェンス法(the Duty of Vigilance)」をそれぞれ制定しており、銀行もその対象となっている。

 BankTrackの代表、Johan Frijins氏は「銀行が人権配慮に力を入れないならば、規制が必要といえる。最近の英仏の規制化の動きは正しい方向だ。ただ、それでもまだ十分とは言えない。政府が明確な方針を示すべきだ」と指摘している。

 国別で下位に低迷したのは、カナダと中国の銀行。カナダは、Royal bank of Canadaをはじめ主要5行がすべて最下位グループの「Laggards」に並んだ。中国も零点の3国営銀行と、辛うじて0.5点を得た中国工商銀行(ICBC)の4行がいずれも「Laggards」だった。

https://www.banktrack.org/download/the_banktrack_human_rights_benchmark_2019_summary_and_key_findings/191125humanrightsbenchmark_summary.pdf