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グローバル金融機関、直近3年間の石炭火力事業向け投融資総額7450億㌦(約81兆円)。融資はみずほ1位、上位3行日本勢。投資2位GPIF。日本勢のパリ協定逆行の姿勢鮮明に(RIEF)

2019-12-07 00:00:53

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  マドリードで開催中の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で、石炭火力発電事業業への金融機関の投融資の調査報告書が公表された。2017年までの3年間の投融資総額は7450億㌦(81兆1505億円)、融資部門では、みずほフィナンシャルグループが1位のほか、上位3位までを日本の3メガバンクが占めた。投資部門でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2位と、日本勢の石炭火力支援の姿勢が国際的に浮き彫りになった。

 

 調査は、ドイツの環境NGOのUrgewaldとオランダのBankTrackが各国30のNGOと共同で行った。世界の石炭火力事業者258社に対して2017年1月から今年9月までの2年9カ月間に実施された融資、引受業務、債券・株式への投資状況を分析した。

 

 この間の総投融資額7450億㌦に達したほか、現在、建設・計画中の新規石炭火力事業が1000基以上ある。これらがすべて建設されると、グローバルな石炭火力発電は現状より28%増の570GW分が追加されるという。パリ協定の目標が明らかに危うくなる。

 

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 融資部門では、2017年以降、307の銀行が1590億㌦を石炭火力発電事業者に直接融資した。もっとも融資額が多かったのは、みずほFGの168億㌦、次いで三菱UFJフィナンシャル・グループ146億㌦、三井住友フィナンシャルグループ79億㌦で3メガバンクがトップ3を独占した。

 

  地域別でも、直接融資全体の32%を日本勢が占めた。日本の350.org Japanの古野真代表は「日本の3メガバンクは、パリ協定を蝕み、石炭火力への最大の貸し手として自らの評判を貶めている」と指摘した。

 

 温暖化対策に積極的とみられている欧州銀行も、石炭火力事業向け直接融資全体の26%を占めた。BankTrackのGreig Aitken氏は「このことは、大半の銀行の気候政策がいかに不十分かを示すものだ。欧州でも仏BNPパリバや英バークレイズなどは直接のプロジェクトファイナンスは止めているが、石炭火力事業者向けのコーポレートローンを続け、新規石炭事業を推進している」と批判している。

 

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 金融機関による石炭火力事業者の株債券の引き受け額は総額5850億㌦。中国の中国工商銀行(ICBC)が330億㌦でもっとも多く、以下も平安保険グループ274億㌦、中国中信(CITIC)257億㌦、中国銀行241億㌦など中国勢が上位を独占。石炭火力事業者向け引き受け総額の69%を占めた。

 

 融資の日本、投資の中国という区分けだが、日本勢は引受部門でも、みずほが143億㌦、三菱UFJ銀行が126億㌦、三井住友銀行105億㌦と、中国勢に次ぐウエイトをみせている。

 

 石炭火力向け投融資の中心は銀行だが、投融資資金への投資家として、年金や保険、資産運用機関等の機関投資家の役割も高まっている。調査では、2019年だけで1922の機関投資家合計で2760億㌦の石炭火力事業者向け投融資資産を抱えていることがわかった。

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 最大の投資家は、世界最大の資産運用機関である米国のBlackRockで86の石炭火力事業者の株債券を176億㌦分保有している。次いで、世界最大の公的年金の日本のGPIFがほぼ同額の174億㌦。米投資運用のVanguardの124億㌦、同Capital Group90億㌦と続く。

 

 GPIF以外の日本勢は、三井住友信託銀行が7位(73億㌦)、野村證券8位(68億㌦)、MUFG9位(64億㌦)、みずほFG12位(46億㌦)。石炭産業への投資額全体では、日本勢は米国に次いで2位の存在感を示している。

 

 UrgewaldのDirector、ヘファ・シュウキングは、「日本企業は、アジアでの石炭火力発電の拡大に2つの役割を果たしている。金融機関による投融資および直接投資だ。J-Power(電源開発)や関西電力などの電力会社のほか、丸紅、三菱商事、住友商事などの大手商社も、オーストラリアからバングラデシュに到るまで新しい石炭火力の建設を推進している。極めて遺憾だ」とコメントした。

 

 融資、引き受け、投資のいずれもの部門でも、上位を占める日本の金融機関は、一方で、今年9月に国連の「責任銀行原則(PRB)」に署名、銀行の投融資行動をパリ協定に沿うようにするとコミットしている。気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にもそろって賛同している。さらに今年は主要各行は石炭火力事業への融資を制限するセクターポリシーを導入・改定した。

 

 まさに「言行不一致」というのは、こうした日本の金融機関のために用意された言葉のようでもある。だが、金融機関が自らの資産を、気候変動の激化の元凶となる石炭火力発電事業に投じ続けることは、将来の資産減損リスクを高め続けることでもある。

 

 欧米勢が、次第に、石炭火力ファイナンスから逃げ出そうとする中で、気候リスクを引き続き大量に抱え込み続ける日本勢の姿は、かつて多額の不良債権を抱え続けた時代にも似通う。自ら「潜在リスク」を積み上げていることに、今回も気づかないまま、走り続けるのだろうか。

                     (藤井良広)

https://coalexit.org/sites/default/files/download_public/COP25_PR_Logos.pdf