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世界150カ国のサステナビリティ評価。1位はノルウェー。日本は米英とともに第二グループ。ただ、財政の「異常値」でESGスコア自体に疑問も。スイスのRobecoSAMが分析(RIEF)

2020-01-02 08:45:01

RobecoSAM3キャプチャ

 

  世界150カ国のESG評価に基づくサステナブル国家ランキングで、ノルウェーが第一位と評価された。トップグループ(スコア8点以上)は13カ国で、このうち欧州勢が10カ国を占めた。日本は米国とともに、第二グループ扱い。ESG評価の高い国々は財政規律の高さと相関性が高いが、財政赤字がGDPの2倍以上もある日本はESG評価と財政規律がかけ離れた「異常値」となっている。日本のESG評価自体の妥当性への疑問も浮上する。

 

 (写真は、もっともサステナビリティの高い国と評価されたノルウェーの国旗)

 

 評価はスイスのESG評価会社、RobecoSAMが公表した。半年ごとの実施だが、今回は対象国数を、2019年6月の65カ国から、一気に150カ国に拡大した。150カ国中、先進国は23カ国、新興・途上国が137カ国。RobecoSAMの「Country Sustainability Ranking(CSR)で評価する。

 

 

 評価項目は、経済性、環境性、地政学、社会性、技術性の5分野について、リスク発生の可能性と、影響を受けるリスクのインパクトの度合いを各項目別に評価する手法でスコア化する。ESG評価の配分は、Gのガバナンスが全体の50%を占め、Sが30%、Eが20%の配分。企業のCSR評価と異なる。

 

 今回トップの評価を得たノルウェーは8.64点。19年6月の2位からスウェーデンを抜いて一位となった。以下、スウェーデン、フィンランド、デンマークのノルディック諸国が上位を占めた。5位にスイス。一方、最悪国はイエメン。次いで、中央アフリカ共和国、スーダンと続く。いずれもスコアは3点に満たない。

 

 

 最悪国4番目のコンゴ民主共和国を含め、そろって、内紛や政情不安が続く国々だ。地政学、社会性の分野での評価がスコアを大きく引き下げている。これらの国々では、ESGの社会性、ガバナンス評価の尺度が、政治的不安定性、軍事的脅威等で左右されている。

 

 スコア8点以上のトップグループ13カ国中、欧州以外はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国。米英仏、日本などは、スコア8点以下7点以上の第二グループにランクされた。このうち、米英の両国は2016年以降の過去3年間でスコアを徐々に低下させている。

 

 

 米国の下落要因はトランプ大統領によるガバナンスへの懸念であり、英国ではBrexitによる国の先行き不透明性がスコア下落につながったとしている。日本については特段の指摘はない。ESG評価も第二グループ中、中間的なポジションにいる。SDGsインデックスとESGスコアの相関性も平均的だ。

 

 ただ、気になる点がある。ESGスコアと公的債務水準の相関性をみると、GDP比の公的債務水準の低い国のESGスコアは高いという図式がきれいに出ている。これを受けRobecoSAMは「財政的に余裕のある国は、持続可能な経済政策や安定的な財政スタンスを追求し易いことがわかる」と結論付けている。

 

 その例外が、唯一、日本だ。日本のGDP対比の財政赤字比率は237%(2019年度)と他国にない高さだ。米国の倍以上、英国の3倍近い。Robecoの分析に基づくと、日本はESG政策を展開できる財政的余裕は、本来ないことになる。

 

日本だけ、遠く離れた右端に位置している。
日本だけ、遠く離れた右端に位置している。

 

 しかし、スコアの半分を占めるガバナンスの面で、対米追随型の政治志向が政情不安等の軽減につながり、その結果として国内政治の安定(安倍政権の長期化)が続き、高スコアにつながったと思われる。こうした内外政治環境はある意味で不安定な面もあり、日本の国としてのESG評価自体は、「異常に財政赤字比率が高い国」という潜在的な課題を引きずっていることは間違いない。

 

 RobecoSAMのシニアアナリストのMax Schielerさんは「国の持続可能性についての適正な評価は、各国が潜在的に抱えるリスク要因に対する追加的な情報と重要な評価を提供する。それらは投資判断の際にも重要な要因となる」と指摘している。

 

https://www.robecosam.com/en/insights/2019/norway-the-worlds-most-sustainable-country.html