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オーストラリアの森林火災で被災した住民らが、石炭関連産業に投融資をしてきた同国大手金融機関のANZを、OECD多国籍企業ルール違反として提訴(RIEF)

2020-02-03 12:46:55

 

 オーストラリアで続く森林火災で焼け出された被災者が、温暖化加速に直結する化石燃料事業に投融資を継続している同国の主要銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)をOECD多国籍企業ガイドライン違反として、オーストラリア政府のNational Contact Points(NCP)に提訴した。ANZにパリ協定と整合性のある目標設定と、投融資活動の情報公開を求める環境NGOの活動に賛同する形で、ANZの投融資活動の責任を求めた。

 

 (上記ビデオは、一気に火の手が広がるオーストラリアの森林火災の状況)


 英Guardianが報じた。OECDのガイドラインは、OECD諸国がそれぞれの国に所属する多国籍企業のグローバル活動について、人権、情報開示、雇用・労使関係、環境などの分野での適正な対応を求める内容だ。企業への拘束力はないが、政府はその遵守と効果的な実施の促進にコミットしている。

 

 環境NGOのFriends of Earth Austria (FOE)は、ANZは化石燃料事業者向け投融資資産をポートフォリオに抱えており、気候危機をファイナンスしていると批判、同社の投融資の是正を求めてNCPに提訴した。その提訴者に被災者が名を連ねたわけだ。

 

ANZ1キャプチャ

 

 提訴行動に参加したのは、オーストラリアの南サウスウェールズ(NSW)州のbatemans Bayに自宅を所有していたJack Egan氏と、火災後設立された「Bushfire Survivors for Climate Action」のメンバーのJoanna Dodds氏、FOEに所属し、NSW州の自宅を失ったPatrick Simons氏だ。

 

 このうちEgan氏は、年末大晦日に同州の沿岸部に保有していた自宅が火災の影響を受けて焼け落ち、現在、ホームレスに陥っているという。同氏は「ANZや他の金融機関が、化石燃料事業を金融面から支援してきたことと、今回の非常に高い高温で乾燥した気象条件の継続との関係には、明確なつながりがある」と指摘している。

 

 そのうえで、「われわれは森林火事による損害や補償をANZに求めるのではない。気候変動の危険性を増長する危険なファイナンスを止めてもらいたいのが趣旨だ」と述べている。

 

   Friends of Earth Austria (FOE)がOECDルールに基づきANZを提訴した主な要請内容では、同社の投融資活動による温室効果ガス(GHG)排出量を、同社自身の排出分だけでなく、取引先を含むScope3まで開示することと、パリ協定に適合するGHG削減目標の設定だ。投融資先の石炭関連産業への影響度を求めている。

 

 ANZの提訴は、オランダのINGバンクに対するNGOの事例を踏まえている。オランダのFOEやグリーンピース、Oxfamが共同で、OECDルールに基づき、INGを相手にして、投融資活動に伴うGHGの間接的排出量と、石炭火力発電向け投融資を2025年までにゼロにすること、同行のポートフォリオをパリ協定に基づく2℃目標と整合させること等を、オランダのNCPに要請。ING側の譲歩を引き出した。

 

 今回、NCP提訴を受けたオーストラリア政府は、ANZとNGOらの仲介を求められる。もし合意が成立しない場合、政府として勧告を発することはできるが、企業に対して履行を強制はできない。ただ、「OECDルール違反」との要請があったことは市場や消費者に知れ渡る。ANZは今回の件について公式なコメントは出していない。

 

 FOEの法律担当オフィサーのEmila Nazari氏は「ANZは過去2年間に、化石燃料セクター向けに88億㌦を融資するなど、石炭関連の投資を34%以上増やしている。オーストラリア最大の石炭ファイナンス機関だ」と指摘している。

 

 同氏は「森林に火をつけるのは違法だ。同様に、我々は、我々の共有の家に火をつける活動に資金を供給する企業も違法、と考える。今回のケースは、気候犯罪の一つだ」と語っている。

https://www.theguardian.com/australia-news/2020/jan/30/bushfire-survivors-join-claim-against-anz-for-financing-climate-crisis