グローバルなインパクト投資機関、新型コロナウイルス感染の影響で行き詰まる途上国のマイクロファイナンス機関支援へ。返済猶予、利払い停止等で協調行動(RIEF)
2020-05-08 20:12:11
途上国のマイクロファイナンス事業等に投融資しているインパクト投資機関が連携し、新型コロナウイルス感染の拡大の影響を被っているマイクロファイナンス機関を支援する覚書(MoU)に署名した。オランダのトリオドス・アセットマネジメント、スイスのBlueOrchardなど8機関。資金繰り危機に直面しているマイクロファイナンス機関に対する返済猶予等4項目の共通対応をまとめた。
新型コロナウイルスの影響はグローバルに波及しているが、とりわけ途上国の中小企業、零細企業、スタートアップ企業などは、感染の影響に加えて、世界経済の縮小に伴う事業急減に直面している。このため、これらの企業を支援しているマイクロファイナンス機関自体も貸出先からの資金返済等が滞り、資金繰り面で苦境に立っている。
今回覚書を締結した8機関は、合計で150億㌦を金融包摂(financial inclusion)地域向けのポジティブインパクト投資を実施している。投資先国はアジア、アフリカ、中南米、中東等、80以上の市場にのぼる。それらの市場で現地のマイクロファイナンス機関を経由して投融資を実践している。
現地のマイクロファイナンス機関は、欧米の資金と途上国の起業家等をつなぐ役割を果たしている。しかし、資金基盤は脆弱で、借り手の起業家や零細企業等がコロナウイルス感染による景気停滞の影響で返済不能等に陥るところが増え、対応に苦慮するところが多い。
そこで各機関は、資金繰りに窮するマイクロファイナンス機関を支える共通の対応策をまとめた。マイクロファイナンス機関は複数のインパクト投資機関から融資を受けているケースも多い。こうしたことから、インパクト投資機関の協調行動による借り手機関への支援は、投資機関同士の債権保全にもつながる。
各機関が締結した覚書では、対象となるマイクロファイナンス機関へのリファイナンスに際して、「『責任ある方法(responsible manner』で対応する」とし、以下の4つの対応策を示している。
①融資先への正常ローンの任意のリファイナンスや、新規ローン、権利放棄等については、これまで通りに、持続できるよう署名機関同士で調整する。
②融資先との合意に基づく借り換え、支払い猶予(moratorium)、利払い停止(payment holiday)は、幅広い貸し手が共通の方法で支援する必要がある。
③法的処理の手順に基づく場合は、より公式な調整と法的手順に基づいた支援を借り手に対して行う。
④再建合意やその準備に基づく再建への通常の支援だけでは、十分な資金があり、倒産を避けられる企業でも、通常の企業が危機に陥る可能性がある。
覚書では、これらの状況に合致する場合に、投資先機関に対するストレステストを実施したうえで、各署名機関が支援に必要な対応を調整するとしている。覚書は法的な根拠に基づくものではないが、今後数カ月にわたって、実務的対応を重視し、透明性と忍耐力を基本原則とした、強い協調をベースに進める、としている。
また覚書は、署名機関以外のステークホルダー(国際公的金融機関や当該国政府等)との対話にも活用するとしている。署名機関は他のインパクト投資機関にも、このイニシアティブに参加するよう呼びかけており、すでにかなりの手応えを得ているという。
覚書に署名した8機関は次の通り。
- BlueOrchard;
- Developing World Markets;
- Incofin;
- Microvest;
- Oiko Credit;
- ResponsAbility;
- Triodos Investment Management;
- Triple Jump; and
- Symbiotics.
http://www.incofin.com/incofin-im-memorandum-of-understanding-to-protect-the-sector/