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「協同労働(ワーカーズ・コレクティブ)」を実現する労働者協同組合法が成立。3人以上集まれば、働く人が自ら雇用の場を作り出せる。介護や子育て、障碍者福祉等を支援(RIEF)

2020-12-05 16:44:24

workcollectiveキャプチャ

 

  働く人が自ら出資して、事業の運営に携わる「協同労働(ワーカーズ・コレクティブ)」を実現する労働者協同組合法が国会で4日、成立した。介護や障碍者福祉、子育て支援、街づくりなど地域の課題に取り組む人たちが3人以上が集まれば、官庁の認可は不要で届け出で同協同組合を設立できる。NPO等よりも簡単に設立でき、介護や子育てなどの分野で、働く人が自ら雇用機会を作り出す場の広がりを支援することが期待される。

 

 (写真は、地域の多様な活動ですでに実施されているワーコレ活動。ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパンのサイトから)

 

 法案は超党派で提出され、4日の参院本会議で、全会一致で可決された。2年以内に施行される。これまで介護や福祉、子育て・障碍者支援、街づくりなど地域課題に取り組む活動を、住民たちが自ら行う場合、NPOや企業組合などを設立する必要があった。しかし、手続きや行政の認可を得るのに時間がかかったり、設立後も活動分野が限られるなどの問題があった。

 

 そうした課題を克服する組織として、協同労働(ワーカーズ・コレ クティブ)の仕組みがある。現在、すでに全国で1万人以上の人がワーコレ組織で働いている。ただ、これまでは組合員が組合の運営に携わると、労働者ではないとみなされ、労働法制の保護を受けられず、低賃金などを強いられる懸念があった。

 

 同法はこうした課題を解決するため、組合が組合員と労働契約を締結することを義務付け、労働者として保護されるようにした。参加する労働者は労働組合を結成する権利も確保される。

 

 同法は全137条で構成される。主な概要は、①組合員が出資②組合員の意見を反映③組合員自ら事業に従事、という3原則に基づいて運営されることを明記している。https://jwcu.coop/houseika/wp-content/uploads/2020/06/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E5%8D%94%E5%90%8C%E7%B5%84%E5%90%88%E6%B3%95%E6%A1%88%EF%BC%882020.6.12%EF%BC%89.pdf
 ワーコレ法制化の動きは1990年代に始まった。2008年に最初の超党派議連が設立され、与野党の枠を超えて検討を続けてきた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業の経営難や雇用不安が広がる中、地域立脚型のワーコレ活動が雇用の受け皿となる期待もある。ただ、同活動の継続のためには経営基盤の確保や、あるいは障碍者をどう安定させるかなどが課題となる。
 ワーコレ活動はすでにいくつかの団体が推進している。日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会は「私たちが40年かけて磨き上げた『協同労働』という宝が、社会全体の宝となり、みんなの手に渡る時代、多くの人々がワーカーズコープをつくり、協同労働が身近になる時代が始まる」との理事長声明を出した。
 ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(WNJ)は「(ワーコレは)出資をし、自分たちの意思を反映させて規定を作り『誰も雇わず、そして誰にも雇われない働き方』を目指して拡げてきた。そのため、この制度を選択しない団体も出てくることが予測され、国や自治体による協同労働の推進、また支援策やより実態に即した法制度となるよう改正を要望していく」としている。
 日本協同組合連携機構(JCA)も「高齢化や人口減少、脆弱化が進み、さまざまな課題を抱える地域において、課題に応じた事業の取り組みが促進されるとともに、多様な就労の機会が創出されることで、持続可能な活力ある地域社会の実現につながる」と声明を出した。