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三菱商事主導のベトナム・ブンアン2石炭火力発電所計画、世界39カ国128の環境・住民団体が、計画撤退・融資停止を求める要請書提出(RIEF)

2021-02-01 11:59:30

bunanキャプチャ

 

 三菱商事が主導してベトナムで建設を計画しているブンアン2石炭火力発電所に対して、世界39カ国128の環境・住民団体が、日本政府および同計画に融資しようとする3メガバンク等に対して、事業からの撤退を求める要請書を提出した。同計画に対しては、日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)が、昨年12月末に、6億3600万㌦(約600億円)の融資契約を結び、「ゴーサイン」を出した形となっている。

 

 要請書をとりまとめたのは、環境NGOのFoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、メコン・ウォッチ、350.org Japanの各団体。

 

 菅義偉首相をはじめ、官民の関係機関のトップに提出された。要請書によると、エネルギー・クリーンエア・リサーチセンター(Centre for Research on Energy and Clean Air)の分析では、ブンアン2発電所計画は、⽇本の火力発電所に⽐べて⼤気汚染物質の排出濃度の予測値が5~10倍⾼いとされている。建設予定地の隣地にはブンアン1が稼働しており、すでに同発電所による地域への粉塵被害や健康被害が報告されているという。

 

 火力発電が予定される地域では、2016年のフ ォルモサ社の製鉄⼯場から汚染物質が流出した事故で、 沿岸部200㎞に及ぶ広範囲が汚染され、漁業等に深刻な打撃が起きた。ベトナムの歴史上、最も深刻な環境被害とされている。

 

 こうしたことから現地の住民の間では、ブンアン2の建設によって、地域の環境汚染がさらに倍化するとの不安が高まっている。しかし、JBICは菅政権の「温室効果ガス排出量2050年ネットゼロ」の公約にもかかわらず、昨年末に駆け込みの形で資金供給契約を締結した。JBICの融資を前提に、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクに加え、三井住友信託銀行も協調融資に踏み切るとみられている。

 

 これらの銀行はいずれも新規の石炭火力発電所計画への融資は原則停止を宣言している。だが、ブンアン2は、計画段階で融資内諾を与えていたとして別扱いする方針のようだ。出資には三菱商事のほか、中国電力が含まれる。



 要請書では、「ブンアン2はこれまでも国際的な批判を受けていた事業で、政府および参加各企業の気候変動対策との矛盾や環境影響評価の不備など、多くの問題が指摘されている」と指摘。さらに、JBICが同事業への融資を、「環境保全」を目的としたウインドウ(成長投資ファシリティ質高インフラ環境成長ウインドウ)を利用することも「グリーンウォッシュ」との批判が国際的にも出ていると述べている。

 

 また「パリ協定採択後、5年が経過、気候変動に関する科学的な分析が進み、気候危機を食い止めるためには新規に石炭火力を建設する余裕がないことは、広く知られ始めている。パリ協定の国別目標の実施が始まる2021年を目前に、いまだ日本政府が新規石炭火力発電事業へ公的支援を決定したことに対し強く抗議するとともに、ブンアン2への支援の撤回を求める」としている。



 先進国による途上国等海外での石炭火力建設事業への公的支援については、バイデン米政権も中止の方針を打ち出している。日本政府のブンアン2への「抜け駆け承認」に対しては、日米気候変動対策の協調路線を害することになりかねないとの見方も出ている。

https://www.foejapan.org/aid/jbic02/va/pdf/210125.pdf