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輸入燃料のバイオマス発電、多くが原産地での持続可能性・合法性の確認不十分。ライフサイクルのGHG確認はほぼなし。「カーボンウォッシュ」の懸念深まる。環境NGOの調査で判明(RIEF)

2021-03-31 22:18:58

 

   わが国の輸入バイオマス燃料によるバイオマス発電の多くが、原産地での持続可能性・合法性の確認が不十分で、ライフサイクルにわたる温室効果ガス(GHG)排出量の確認はほとんどなされていないことがわかった。環境NGOのFoE Japanがバイオマス発電事業者及び同燃料調達に関わる商社や出資企業に対して実施したアンケートで判明した。輸入燃料バイオマス発電は「カーボンウォッシュ」である懸念が深まった。

 

 アンケートは、発電容量1万kW以上の発電所を有する主なバイオマス発電事業者と、その出資企業、同燃料の調達を行う商社等の計204社を対象とした。実施時期は、今年1月12日から2月12日。その結果、44社から回答を得た。回答率は約2割で、逆に言うと約8割の関連事業者は回答もままならぬ「ウォッシュ企業」の可能性が高いともいえる。



 回答の中では、稼働中の発電所21ヶ所のうち17ヶ所、計画中の発電所17ヶ所のすべてが、輸入燃料(木質ペレット、木質チップ、パーム椰子殻(PKS))を利用もしくは予定しているとした。それらの燃料の生産国は、木質ペレットと同チップは、アメリカ、カナダ、インドネシア、ベトナム、マレーシアの5カ国、PKSはインドネシア、マレーシアの2カ国だった。

 

木質ペレット工場と原料となる大量の木材(米ノースカロライナ州:FOE Japanサイトより)
木質ペレット工場と原料となる大量の木材(米ノースカロライナ州:FOE Japanサイトより)



 稼働中の発電所のうち、輸入木質ペレットや同チップを利用する7発電所の全てで、森林認証制度による燃料の持続可能性・合法性の確認を行っているとの回答があった。ただ、そのうち3発電所では、サプライヤーがCoC認証を取得していることの確認だけで、燃料自体の認証(FM認証)は確認していないという。同様の回答は、燃料の調達・供給を行う商社等でも多くあった。

 


 CoC(Chain of Custody:加工流通過程の管理)認証は、事業者の認証製品と非認証製品と分けて管理する能力を保証するもので、燃料の森林認証(FM認証)とは別物。FOE Japanでは、「CoC認証はFM認証とセットで利用しなければ持続可能性・合法性を確認できない」と指摘。こうした基本的な理解がないことから、FOE Japanは、複数の発電所でFITの要件である燃料の持続可能性・合法性が担保できていない可能性があるとみている。



 一方、PKSを燃料にする稼働中の発電所12ヶ所のうち、第三者認証制度を利用しているとの回答は1ヶ所だけ。その他の11ヶ所では、「独自の取り組み」で持続可能性・合法性を確認しているとの回答だった。FITの「事業計画策定ガイドライン」では、事業者が自社のHP上で、取り組み内容と燃料調達元の農園の情報を開示することを条件に、2022年3月末までに認証を取得すればよいとの猶予を与えている。しかし、現状では対象の12ヶ所の発電所のうちで、必要情報をHPで公開している企業はゼロ。いずれもガイドラインを無視、あるいは違反しているといえる。



 バイオマス発電事業への出資企業では、出資判断の際に、燃料生産で、森林減少・劣化や生物多様性の減少が生じないことを確認していると回答した企業は、出資企業17社中14社あった。ただ、そのうちで、事業のライフサイクルにわたるGHG排出量を確認しているとした企業は、1社だけだった。

 


 同じ時期に、RE100及び日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に加盟する主要企業50社にも、アンケートを実施、バイオマス発電の持続可能性に関する認識や方針を聞いた。回答企業8社のうち、自社が契約する電力会社の選定に際して、持続可能性や環境社会影響評価等に関するガイドラインを持っていると回答した企業は1社だけだった。

 

 同社のガイドラインには、GHG排出量及び生物多様性と森林減少・劣化に関する項目が含まれていた。ガイドラインはないものの、GHG排出量、生物多様性損失、違法労働の懸念があったため、独自の調査・ヒアリングを踏まえて電力会社を選定したとの回答が1社あった。全体的には、バイオマス発電事業者も、それらの電力を購入する需要企業も、自らが扱うバイオマス電力の厳格性について配慮を欠くところが大半ということになる。

 

 何よりも、バイオマス発電関連事業者204社のうち、回答企業が約2割の44社しかなかった。大半の180社が無回答というのは、日本のエネルギー関連企業のESGマインドの低さを表すものであり、それらの企業の事業自体、持続可能性を欠くことを示しているといえる。まさに「カーボンウォッシュ」であり、「ESGウォッシュ企業」が多いということだ。FOE Japanにはぜひ、そうした無回答企業の名前を公表してもらうと同時に、回答しない理由を問うてもらいたい。



 FoE Japanのバイオマス担当の小松原和恵氏は、「今後、バイオマス燃料の輸入量は急増が予想される。燃料生産により、現地の森林が伐採され、生態系の破壊や先住民族の人権を脅かす事例も報告されている。ライフサイクルを考えればバイオマス発電事業は決してカーボンニュートラルではない。『バイオマス発電=環境に優しい』との幻想は捨てるべき」と述べている。

https://www.foejapan.org/forest/biofuel/210330.html#result