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住友商事に対して、豪環境NGOが「パリ協定に沿う経営計画策定」を求める株主議案提出。今株主総会での気候関連株主提案は三菱UFJフィナンシャル・グループへの提案に次ぐ(RIEF)。

2021-04-03 21:17:38

sumishouキャプチャ

 

  オーストラリア拠点の環境金融NGOマーケット・フォース(MF)は、住友商事に対して、パリ協定の「1.5℃目標」に沿った経営を行う事業戦略を盛り込んだ計画の策定を求める株主議案を提出した。日本企業の今年の株主総会で、気候変動対策を求める株主提案は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)への提案に次ぎ2件目。商社では初めて。日本の大手企業も投資家に対して気候対応の明確化を求められる時代となってきた。

 

 マーケットフォース(Market Force : MF)は、地球温暖化や環境悪化に影響を及ぼす投資活動を防ぐことを目指して、2013年にオーストラリアで設立された環境金融NGO。環境NGOのFOE オーストラリアと連携し、さらにグローバルに環境金融NGO活動を展開するBankTrackネットワークにも参加している。

 

 MFは、すでに3月26日に住友商事に議案を提出した。内容は「定款の一部変更」で、「当会社が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同していることに留意し、 当会社は、石炭、石油、ガス事業関連資産の保有量、事業規模をパリ協定の目標に沿ったも のにするための指標と、短期、中期、長期の目標を含む事業戦略を記載した計画を決定し、年次報告書にて開示する」との条項を、定款に規定するよう求めている。

 

MFキャプチャ

 

 提案の理由として、日本の他の商社が石炭関連資産(一般炭鉱及び発電所)を処分する中、住友商事の石炭事業方針は現在でも、既存の炭鉱取得や発電所新設を許容しているほか、石油、ガス事業でも、パリ協定と整合するカーボンニュートラル化への道筋を示していない、と指摘している。

 

 TCFD提言は、気候リスクへの対応を、ガバナンス、戦略、リスク管理等に取り込むことを求めている。住友商事は、それに賛同しながら、実際には不十分な対応にとどまっていることから、同社自体が脱炭素経済への移行に伴う重大な経済リスクに晒されている、とした。

 

 同様に、同社の株主もリスクにさらされる。MFは今回の株主提案が取り入れられることによって、株主は同社の気候リスク管理が適切か否かを判断できるようになると説明している。TCFD提言には多くの日本企業が署名しているが、「署名は実行を伴う」という基本原則に基づいた対応が為されている企業が少ない点を問いただす提案ともいえる。

 

 MFは株主議案を提出する一方で、同社の株主に向けて、6月に開催する同社株主総会で、今回の議案への賛成投票を求める呼びかけを開始している。投資家に対しては、提案への賛成意思を住友商事に表明するとともに、一般にも公表することや、住友商事が現在進める次期中期経営計画の策定に向け、現行の環境方針や石炭火力発電事業・炭鉱開発事業方針の改定を、同社に働きかけること等も求めている。

 

 MFは他の環境NGOらとともに、2019年の終わりから、住友商事と気候リスク管理の強化、個別にはバングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業フェーズ1への同社の関与等を巡って個別の対話を展開してきた。これまで同社に対して3通の要請書を送付、3回の対話交渉等を実施したという。しかし、十分な成果が得られなかったため今回の行動に踏み切ったとしている。

 

 住友商事は政府の方針に沿って「2050年ネットゼロ」を掲げている。だが、それを達成するための2030年の中間目標は設定しておらず、1.5℃の温暖化に沿う移行リスクも、2℃を超える場合の物理リスクも、シナリオ分析で点検していない。石炭、石油・ガスの脱炭素化に向けた道筋も、段階的廃止の計画も示していない。「宣言」はしても、実行計画を棚上げする、典型的な日本企業の一つとされる。

 

 MFは別途、日本の気候ネットワーク等とともに、MUFGに対しても、パリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示するよう求める株主提案を提出している。MUFGは石炭火力発電事業への新規融資停止等の方針を定めているが、内外で化石燃料や森林破壊事業への多額の資金提供を続けているとして、投資家がMUFGの投融資にかかる気候変動リスクを適切に評価できるようにする対応を求めた。http://rief-jp.org/ct1/112489

 

 世界全体では、気候関連のNGOや投資家からの株主提案は、2016~2020年の間で、約250件が提案されているという。今年に入ってからもすでに、米国では30件以上の気候関連議案が提出されている。日本企業に対しては、これまでほとんどこうした提案はなかったが、昨年、気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループに対して提案して以来、広がり始めている。気候ネットの提案には、欧米の機関投資家等を含め34.5%の賛成票が集まった。http://rief-jp.org/ct7/110824

https://www.marketforces.org.au/wp-content/uploads/2021/03/Investor-Briefing-Sumitomo-proposal_public_JA.pdf

https://www.marketforces.org.au/wp-content/uploads/2021/03/Sumitomo_SH-Proposal_JA_final.pdf