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市民主導 発電ファンド 中部に拡大 名古屋でも事業化(中日新聞)

2012-08-23 12:08:54

(写真)本社の屋根に太陽光発電パネルを設置している平沼辰雄社長=愛知県弥富市で
(写真)本社の屋根に太陽光発電パネルを設置している平沼辰雄社長=愛知県弥富市で


住民や企業から出資を募り、その資金で太陽光など自然エネルギーで発電。電気を電力会社に売り、その収益を出資者への配当や元本返済に充てる-。こんな市民ファンドによる発電事業が、中部地方に広がってきた。共通するのは、市民主導でエネルギーの地産地消を目指す姿だ。(石井宏樹)

 名古屋市昭和区に6月に設立し、出資の呼び掛けを開始する事業会社「おひさま自然エネルギー」。中心メンバーとなっているのが、解体業のリバイブ(愛知県弥富市)の平沼辰雄社長(60)だ。

 5年前、愛知中小企業家同友会の役員だった平沼社長は、地域貢献事業の創設に向けて、県内の中小企業から約3千万円の出資金を集めた。その資金で地域金融に取り組むつもりだったが、貸金業法改正で最低資本金が引き上げられて頓挫した。

 7月に始まった再生可能エネルギーの全量買い取り制度で、太陽光発電に1キロワット時当たり42円の固定価格が付いたことも後押しした。平沼社長は「今がチャンスだと思った。屋根の賃料や税金のことを考えると、経営は決して楽ではないが、続けていける見通しが付いた」と話す。

 1億5千万円を目標に、今年11月に市民ファンドへの出資者募集を開始する。配当は年2%以上とする。愛知県内の中小企業の工場の屋根20カ所と、民間住宅30カ所に3~10キロワット級の太陽光パネルを設置する予定。一般家庭約70世帯分の消費電力をまかなえる見通しだ。

 学校や病院など公共施設にもパネルを設置できないかと自治体との協議も続けている。平沼社長は「愛知県は日射量も多く、活用されていない屋根がたくさんある。都市型の太陽光発電所のモデルになる」と期待する。

 平沼社長が参考にしたのは、長野県飯田市の事業会社「おひさま進歩エネルギー」(原亮弘社長)。八年前に国の補助金も活用し、全国で初めて市民ファンドによる太陽光発電に乗り出した。

 1口10万円(年利2.0%)と50万円(同3.3%)の2種類を用意し、延べ約1700人から8億4千万円を集めた。出資者は飯田市にとどまらず、全国に広がった。

飯田市内の公民館や保育園などの公共施設と、民家の屋根250カ所に太陽光パネルを設置。合計出力は約1600キロワットで、400世帯分の消費電力に相当する。さらにファンドを活用して、協力する事業会社が4月から、富山県魚津市にある急勾配の川で、最大千キロワットの小規模な水力発電事業を始めた。

 手探りの取り組みを支えたのは、行政の支援体制だった。飯田市は公共施設の屋根を無料で20年間、事業会社が使うことを特別に認めた。原社長は「出資者は長期間、本当に事業が続くのか不安を感じている。行政が積極的にかかわり、支援することで市民ファンド事業の信頼性が高まる」と語る。

 中部地方ではこのほか、滋賀県湖南市と住民が連携して一般社団法人「コナン市民共同発電所プロジェクト」を6月に設立。市民からの出資で、福祉施設への20キロワット級の太陽光パネル設置を目指している。

 http://eco.chunichi.co.jp/news/2012/08/001190.html