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代金前払い農水産物届ける 「支援型農業」被災地で注目(河北新報)

2014-04-07 10:32:57

東京・新橋であった消費者との交流会でカキの殻むきを実演する阿部さん(左
東京・新橋であった消費者との交流会でカキの殻むきを実演する阿部さん(左
東京・新橋であった消費者との交流会でカキの殻むきを実演する阿部さん(左


消費者に代金を前払いしてもらい定期的に生産物を届ける米国発祥の地域支援型農業(CSA)方式の取り組みに、東日本大震災の被災地の若手農漁業者らが挑んでいる。被災地支援や震災ボランティアで縮まった都市と農漁村の関係を1次産業の振興につなげる狙いがある。後継者不足に悩む東北の小規模生産者が経営を下支えする手法として注目を集めそうだ。(東京支社・門田一徳)

 

若手挑戦消費者とタッグ

<51人申し込む>
宮城県石巻市牧浜で両親とカキを養殖する阿部貴俊さん(44)は2013年1月、復興が進まない古里の浜を憂い、脱サラして家業を継いだ。

 
CSA方式の取り組みを始めたのは同年7月。「作業の手間や牧浜の自然を伝え、カキのおいしさをもっと広めたい」と考え、年会費1万2000円で会員を募ったところ、首都圏や盛岡市などから51人の申し込みがあった。

 
会員には年3回、生産物を送る。昨年12月には地元のムール貝を、ことし2月には殻付きカキを届けた。5~6月には排卵直前のミネラル豊富な「完熟ガキ」を送る。

 
交流サイト「フェイスブック」も積極的に活用する。カキの成長や季節ごとの牧浜の漁の様子を会員に発信。3月5日には、会員が東京で企画した交流会に招かれた。会員ら13人と意見を交わし、牧浜での漁業体験ツアーの実施が決まった。

 
交流会に参加した東京都港区の会社役員土佐百合子さん(35)は「阿部さんの取り組みが成功すれば、被災地全体にCSAが広がるかもしれない」と期待する。

 
阿部さんが見据えるのは地元カキ養殖業の改革だ。震災後、牧浜ではカキ生産者が7世帯に半減し、高齢化が進んだ。「うまいカキが採れるのに、このままでは漁師がいなくなる。取り組みを地域全体に広げ後継者を育てたい」と力を込める。

 

<取材きっかけ>
阿部さんとCSAをつなげたのは、復興支援に取り組む岩手県花巻市のNPO法人「東北開墾」。CSA方式を普及させようと昨年7月に創刊した「東北食べる通信」の取材がきっかけだった。

 
東北開墾によると阿部さん以外にも、同誌で紹介された岩手県遠野市のコメ農家や岩手県久慈市の畜産農家ら30~40代の若手生産者4人がCSA方式を導入したという。岩手や宮城の伝統野菜農家や水産業者ら4人も導入に向けて準備中といい、着実に広まる兆しを見せている。

 

 

[地域支援型農業(CSA)] CSAは「Community Supported Agriculture」の略で、「地域で支える農業」という意味。代金前払いなどで生産者の自然災害リスクを共有して経営を支える取り組み。1980年代、食材の安全意識の高まりを背景に欧米で始まり、都市近郊で急速に拡大している。国内の実践例には大崎市の「鳴子の米プロジェクト」がある。

 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140407_72017.html