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パナソニックによるNPO支援の社会的インパクト評価、投入額の8.82倍の成果に。パブリックリソース財団が「SROI」を定量化推計。英団体の初認証も得る(RIEF)

2018-03-27 22:34:30

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 公益財団法人「パブリックリソース財団」は、パナソニックとの協働で、認定NPO「アレルギー支援ネットワーク」への組織基盤強化助成支援事業の社会的インパクト評価を行った。その結果、社会的インパクトを測るSROI(Social Return on Investment)は投入額の8.82倍となり、大きな社会的成果を生んだとしている。同評価については、英国のSROI評価団体の「Social Value International」から日本で初めて認証を得た。

 

 今回、社会的インパクトの評価対象となった「アレルギー支援ネットワーク」は、1988年に愛知県で活動を始めた非営利団体で、自治体や企業、各分野の専門家と患者家族を結びながら、アレルギーの正しい知識の普及や、アレルギー、アトピー、化学物質の患者支援活動等を行っている。

 

 同ネットワークでは、アレルギーに関する正しい情報が伝わっていないことで、患者が孤立しがちであることなどから、そうした情報を備えた保育士や栄養士などの専門職を育てるため、2006年から「アレルギー大学」事業(週末などの連続講座)を開始した。パナソニックのPanasonic NPOサポート ファンドは翌07年から、組織基盤強化のため、3年間にわたって合計350万円を同団体に助成した。

 

 資金は、団体のスタッフ不足や事務所経費をまかなう一般経費に充当された。資金の提供に加えて、年1~2回の訪問インタビュー、贈呈式、成果報告会等での励まし活動も続けた。こうした支援の結果、アレルギー大学は同団体の中核事業に成長した。組織基盤強化支援によって起きた成果を定量的に把握するため、パブリックリソース財団は①組織がどれくらい変わったか②事業の成果がどれくらい生まれたかーーの2点に絞って評価を行なった。

 

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 それぞれについて、マネジメント能力、人材、財務など5分野155の設問からなる「NPOマネジメント診断ノート」を指標として活用し、その変化を定量的に評価した。その結果、①の組織の状況は、助成を受ける前は31.4点(100点満点)だったのが、助成終了後6年目に当たる2015年には53.7点と、22.3ポイント上昇した。

 

 ②の事業の成果では、まず助成額350万円に、アドバイスやフィードバックを金額化して、投入資源価格を380万円とした。これに対して成果のほうは、アレルギー大学の収益、アレルギー事故の減少による時間の節約、安心して子育てができるようになることの精神的安心などを合計して計算すると、3351万4968円(割引率差し引き後)となった。

 

 この②の事業の成果(社会的価値)を、投入資源の価格で割ったSROIが8.82倍となるわけだ。パブリックリソース財団では「組織基盤強化の支援の社会的インパクト評価がSROIが高い値をつけたのは、組織基盤強化への支援が、事業成果の増大に対して「てこ(Leverage)」のように働き、社会的インパクトがより大きくなった、とみている。

 

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 最近はESG活動やESG投資が喧伝される。ESGがムードで終わらないためにも、特に経済的評価の難しいSの社会的活動については、活動・投資の成果を、このような社会的価値を算定する試みで価値化することで、活動のポイントや課題が明確になり、持続可能性が生まれる。支援活動の継続のためにも、こうした評価の手順、手法の活用が求められる。