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市民出資再エネファンドの老舗格、長野・飯田市の「おひさまエネルギーファンド」、ファンド出資分の分別管理不備と流用で、金融庁から3カ月の業務停止処分。社長交代(RIEF)

2018-10-01 23:10:46

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 金融庁は、市民太陽光ファンドの老舗格である長野県飯田市の「おひさまエネルギーファンド」に対し、経営者(前社長)による出資金の私的流用などのほか、不適切な資金管理が改善されていないとして、金融商品取引法に基づき、12月27日までの3カ月間の業務停止処分を行った。

 

 (写真は、地域の公民館や幼稚園などの屋根借りで太陽光発電設備を設置してきた「おひさまファンド」)

 

 同社への処分は、証券取引等監視委員会が9月21日に行政処分を出すよう勧告していた。監視委によると、同ファンドは経営者の原亮弘前社長が管理運営してきたが、5年前に、市民出資資金と会社資金の分別管理が十分にできておらず、一部が会社に流用されていたとして、2014年5月に金融庁から業務改善命令を受けていた。

 

 同処分を受け、同社は再発防止策を金融庁に提出、再発防止策として、原前社長には資金管理業務に一切関与させない等の改善策を報告していた。しかし監視委が今年5月に実施した検査によると、実際には原前社長単独で資金管理業務を行う状況が継続していたほか、出資金資金の会社経費等への流用が見つかったという。

 

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 監視委によると、2012年5月~今年5月までの期間を通じて、市民からの出資金の一部が入金されている口座から計830万円が原前社長の自宅購入費や生活費などに充てられていたとされる。また、そうした資金流用を隠すため、他のファンド口座との間で2350万円の資金移動を行っていた、との指摘を受けている。

 

 金融庁はこうした監視委の指摘と勧告を受けて、このほど、同社に3カ月間の業務停止を命じた。また、一連の問題における責任の所在の明確化と原因の究明、改善策の策定・実行などを求める業務改善命令を出した。

 

 同社によると、原前社長は8月17日に引責辞任し、菅沼利和氏が後任の代表取締役社長に、 蓬田裕一氏が代表取締役専務に就任した。また原前社長の流用分は全額弁済されたとしている。

 

 同社は2004年に南信州おひさまファンド(出資総額2億150万円)を立ち上げたのをはじめ、これまでに長野・飯田市を中心に10数本の再エネファンドを開設しており、市民出資の再エネファンドのモデルとして全国に知られてきた。

 

 原前社長は「法令遵守意識の不足や慢心から、安易に資金を不適切に扱ってしまった。不適切行為の指摘を受けた後、直ちにお金を清算し、おひさまファンドグループ各社の全ての役職を辞し、株式も全て譲渡した。自身の不適切行為を真摯に反省するとともに、これからもこの事態について誠実に対応していく」とのコメントを公表している。

 

 事業は原前社長の個人的な熱情で推進されてきたが、組織的な運営に発展できないまま、行き詰まった形だ。ただ、運営されている各ファンドは発電収入も確保されており、今回の業務停止の影響は受けていない、としている。再エネファンド、市民発電は各地で広がっているが、長期の事業となるだけに、運営面の透明性の確保と、それを担う人材の育成が課題という教訓を残した。

 https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180921-1.htm