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グローバル環境NGOネットワークの「CAN-I」の代表が、パワハラや差別行為などで一時休職。COP会議のNGOリード役を務めたHmaidan氏。女性元職員一人は自殺(RIEF)

2018-12-03 08:00:35

Can1キャプチャ

 

  国際的な環境NGOのネットワーク組織として知られるClimate Action Network International(CAN-I)の代表(Executive Director)の Wael Hmaidan 氏が、女性職員に対してパワハラや差別等の不適切行為を重ねたとして停職処分を受けたことが判明した。不適切行為を受けたとされる元女性職員の一人はその後自殺している。

 

 (写真は、複数の女性職員への「不適切行為」の指摘を受け、一時休職に追い込まれたCAN-IのHmaidan氏)

 

 CAN-I が先月7日に出したコメントによると、多くの深刻な苦情が事務局に提出されたとし、同組織の理事会はこれらの内容を深刻に受け止め、独立した機関に職場調査を委ねることになると公表した。http://www.climatenetwork.org/press-release/administrative-announcement

 

  CAN-Iは気候変動問題に取り組む世界の環境・気候NGOの中心的役割を果たしている。ネットワークする組織は日本の環境NGOを含め、120カ国、約1300団体に上る。2日から、ポーランドのカトビッツで国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が始まったが、CAN-Iは毎日、NGOを代表する形で会議の状況を記者発表する役割を果たしている。

 

  疑惑の目を向けられているHmaidan氏は2012年4月からCAN-Iの代表を務めている。同氏はこれまでのCOP会議でも、各NGOをとりまとめて会議の状況などを、各国から集まった記者団等にブリーフィングするスポークスパーソンとして人気を博してきた。しかし、今回は不在となった。

 

 Hmaidan氏は、休職を命じられ、代表の役割はグローバルエネルギー政策アドバイザーのStephan Singer氏が代行している。外部機関に委託された調査は、年末をメドに結論を出す予定。

 

 英気候関連メディアが入手した関係者からの3通の手紙によると、いずれもCAN-I が女性職員に対する不適切な行為を防ぐ十分な措置がとられていなかったと指摘しているという。

 

 一つは、CAN-Iに勤務し、昨年10月に自殺したHolly Bordayさん の父親、Robert Borday氏がCAN-Iでの娘の同僚たちに宛てたもの。「気候活動に従事している人々へ」と題し、「娘の心を完璧に壊した職場風土について、話してもらいたい」と求める内容だ。

長時間労働と「不適切化行為」を受け、自殺したBorderさん
長時間労働と「不適切な行為」を受け、自殺したBordayさん

 もう一通の手紙は、別の元女性職員が2015年以降のすべてのCAN-Iの職員に送ったもの。Hmaidan氏が彼女の容姿をからかったり、過剰で屈辱的な仕事を強いたことなど、同氏の不適切行動を子細に指摘する内容になっている。

 

 3通目の手紙は、最初のBorday氏の手紙に触発された形のもので、14人の元職員と現役の一人が連名で、CAN-Iが職場内の注意義務を怠ったと非難している。彼女たちは、安全な職場環境を作るため、CAN-Iに対して「迅速な行動」をとるよう求めている。

 

 同メディアが父親の手紙を紹介する内容によると、自殺したHolly Bordayさんは、パリ協定を結んだCOP21の直前の15年11月に、CAN-Iで働き始めた。主な仕事はHmaidan氏に直接、諸事を報告をする役割だったという。

 

 彼女は翌年2016年初めにベルリンで連続して開いた気候変動会議の際、Hmaidan氏の過剰な要求によって長時間労働に追い込まれた。その影響で、彼女は睡眠をとることもできず、ついには心身のバランスを崩し、パニックを起こした。

 

 驚いた両親が米国から駆け付け、自宅に連れ帰った。だが、精神的ショックが大きく、深く落ち込んだままとなったという。父親によると、彼女は膨大な仕事を背負わされただけでなく、「上司が、私に不適切な行為をする」とも漏らしていた、という。

 

 Borday氏は手紙の中で述懐している。「時々、私はこんな風に思う。気候変動活動での彼女の経験は、非常にネガティブで、屈辱的だったため、彼女が回復するチャンスまでもつぶしてしまった、と。気候変動活動が、彼女のエネルギーを殺し、彼女の未来に向けた自信を粉々にしてしまった」

 

 環境・社会NGOの不祥事としては、今年2月に、英オックスファム・インターナショナル(Oxfarm International )の代表が、出身国のグアテマラで汚職疑惑によって逮捕されたほか、2010年のハイチ大地震の際に、ハイチに派遣されたオックスファムの職員が現地で売春行為をしたことが暴露されている。http://rief-jp.org/ct7/76849

 

 また気候変動関連では、国連環境計画(UNEP)のソルヘイム事務局長が、公私混同を含む頻繁な海外出張を繰り返し、今回のCOP24の直前に辞任している。http://rief-jp.org/ct8/84932

 

 今年は、トランプ米政権のパリ協定離脱で象徴されるように、「自国中心主義」の流れが各方面で噴出した。残念ながら、環境・社会的課題に取り組む人々の中にも、人権軽視、自己中心的な人物が少なからず紛れ込んでいることを浮き彫りにした年でもある。

http://www.climatenetwork.org/press-release/administrative-announcement

http://www.climatechangenews.com/2018/11/26/global-ngo-chief-suspended-bullying-inappropriate-conduct-allegations/