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米自然保護団体「TNC」、海洋環境保全のため20カ国でブルーボンド16億㌦を発行へ。調達資金で途上国の債務軽減と引き換えに海洋保全を確保する「環境・債務スワップ」を活用(RIEF)

2019-05-07 10:43:31

Bluebondキャプチャ

 

  米国の自然保護団体、ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)は、世界20カ国において海洋生態系やサンゴ礁等を保護する資金を調達するため、16億㌦(約1776億円)規模のブルーボンドを発行する。調達資金で海洋環境保全地域の途上国の債務を軽減させ、その代わりに保全活動を確保する「債務・環境スワップ」手段等に使うという。

 

 TNCの計画によると、ボンド発行での調達資金で保全対象とするのは、世界の海洋のうち400万㎢の領域。それらには世界のサンゴ礁の13%が存在する。同地域には4300万人の人々が、沿岸部の100km以内のところで生計を立てている。

 

 したがって、海洋保全と同時にこれらの地域の人々の漁業や海洋資源に依存した生計の保全も目指す。ブルーボンドは今後5年の間に順次発行する。すでにTNCは2012年以来、インド洋のセーシェル共和国と共同で、ブルーボンド発行を進めてきた。

 

TNC2キャプチャ

 

 同国は昨年、初のブルーボンド国債1500万㌦、期間10年を発行した。資金使途は海洋保全やサステナブル漁業等の普及が中心。対象事業からの低リターンをカバーするため、ブルーボンドには世界銀行や国連の地球環境ファシリティ(GEF)などからの金融的支援を受けた。同国はこれらの資金の活用で、2020年までに40万㎢の海洋生態系の保全を進めている。http://rief-jp.org/ct6/84168

 

 TNCが目指すブルーボンドも、当該の途上国政府が発行するか、または、発行したボンドの資金使途を、途上国政府が抱える債務の利子や返済期間を軽減するための低利資金として充当することで、当該国の海洋環境保全を確約させる「環境・債務スワップ」手段等に活用する計画だ。

 

 TNCによると、現在、同団体が進めている海洋保全プロジェクトには4000万㌦が必要。それらの資金のうち2300万㌦分は、すでに同団体に対する寄付等で確保している。ブルーボンドでの調達資金はこうした資金をカバーするほか、対象海域を広げて20カ国の海洋保全、沿岸部住民の持続可能な生計保全等に充当するとしている。

 

 TNCはブルーボンド発行国に対しては、資金使途を確実に海洋保全に向けるために、国ごとに「トラストファンド」を設け、調達資金管理をファンドで一括して実施する考えという。TNCは国ごとの海洋保全活動の実務も担う。

 

  現在の科学者の推計では、海洋環境はこのままの使用ペース(BAU)が進行すると、世界のサンゴ礁の90%は、われわれの生存期間内に絶滅するとされている。また漁業もすでに過剰搾取状態となっており、グローバル漁業の80%は行き詰まるとみられている。

 

 TNCのCEO、Mark Tercek氏は「世界の海洋環境が取り返しのつかないポイントに至るまで、まだ取り戻しのための時間はある。従来のような保全アプローチではなく、スケールをアップした大胆な取り組みが求められている。ブルーボンドは効果がある。ボンドをスケールアップすることが大事だ」と述べている。

 

https://www.edie.net/news/4/The-Nature-Conservancy-launches–30m-Blue-Bonds-scheme-for-marine-protection/