HOME |南極とグリーンランドの氷床溶融、2010年代はIPCC最悪シナリオのペース。前10年より6倍早い。今世紀末の海面上昇を17cm上乗せ。毎年4億人が洪水被害に。国際推計(RIEF) |

南極とグリーンランドの氷床溶融、2010年代はIPCC最悪シナリオのペース。前10年より6倍早い。今世紀末の海面上昇を17cm上乗せ。毎年4億人が洪水被害に。国際推計(RIEF)

2020-03-17 07:54:51

ice1キャプチャ

 

  南極圏とグリーランドの氷床が2010年代の10年間は、その前の1990年代に比べて、6倍も早いスピードで溶けていることが衛星を使った科学的分析でわかった。氷床の溶解速度は国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最悪シナリオに沿った形で進んでいるという。両極域での氷床がこのままのペースで溶融すると、今世紀末までに世界の海面は追加的に平均17cm上昇、中位シナリオでも合計70cmの上昇となる。海岸付近に居住する約4億人が毎年、洪水等の被害を受けると推計している。

 

 調査は南極やグリーランドの観測を続けている国際的な科学者の共同ネットワークの「Ice Sheet Mass Balance Inter-comparison Exercise (Imbie) 」に所属する世界50の機関の89人の科学者らが実施した。1992年から2018年までの北極圏とグリーンランド全体の変化を衛星データとコンピューター解析で分析した26の調査を統合する形で展開した。

 

割れて流れ出す南極の棚氷
割れて流れ出す南極の棚氷

 

 調査には、11の異なった観測衛星が集めたデータを使った。それらのデータには氷床の変化量のほか、流量、重量等の測定データが含まれている。

 

 北極圏の海氷も毎年、溶融が進んでいる。だが、北極圏の場合、海氷は海面に形成されるため、溶けても海面上昇にはつながらない。これに対して、グリーンランドや南極のように陸域に堆積している氷床が溶けると、溶けた水は海に追加的に供給されることになり、海面上昇を引き起こすことが知られている。

 

 観測チームの推計によると、2010年代に溶融した南極とグリーンランドの氷床の損失は年間平均4750億㌧と推計された。この数字はその前の10年間である1990年代の年間平均810億㌧よりも、6倍も増えている。両期間を合わせると、1992年から2017年の16年間で合計6兆4000億㌧の氷床が溶けて海洋に流れ出したことになる。

 

南極の東部地域で海洋に崩壊する氷河の先端
南極の東部地域で海洋に崩れていく氷床の先端

 

 この氷床溶融で、地球全体の海面は17.8 millimetres(1.78cm)上昇した。このうち、グリーンランドの氷河等の溶融の寄与は60%で10.6 millimetres、南極の氷河・氷床の溶融が40%分の7.2 millimetresの上昇をそれぞれ引き起こした。このペースで氷床の溶融が今後も進むと、今世紀末には海面上昇は17cmに達すると推測される。

 

 IPCCの2014年の評価では、中位的シュミレーション(RCP4.5)で2100年までの海面上昇は53cmと推計されている。今回明らかになった南極とグリーンランドの氷床溶融はこれらに加えて追加的に17cm上昇するというもので、海面上昇は全体で70cmに達することになる。

 

  調査の共同リーダーを務めた英リード大学のAndrew Shepherd教授は「今回の推計による海面の追加的上昇の17cmは、決して小さなインパクトではない。しかもすでにそのインパクトは進行中で、地球上の沿岸コミュニティ全体を荒廃させるだろう」と警告している。

 

 氷床溶融の原因は、南極の場合は大半が海洋の温度上昇によるとみられる。海洋の温度上昇によって海面に注ぎ込む氷河が溶けて、氷床全体が溶け出すトリガー役になっているという。グリーンランドの場合も、原因の半分は海洋の温度上昇だが、これに加えて、大気の温度上昇によって氷床の表面の氷も溶けているとしている。

https://www.bbc.com/news/science-environment-51846468

http://imbie.org/