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欧州の景気低迷で石炭発電が急増=排出権コスト低下が主因(Reuters)

2012-05-10 14:41:17

もうもうと煙を吐く石炭火力発電所(12年2月10日、ドイツ・ノイラート)
(Reuteers)【ロンドン8日ロイター時事】ロイター通信の調査によると、欧州の景気低迷により、一部の国の発電会社は、安価だが環境汚染の大きい石炭の利用量を増やしている。それでも、法的拘束力のある二酸化炭素(CO2)の排出目標を達成できる状況だ。

もうもうと煙を吐く石炭火力発電所(12年2月10日、ドイツ・ノイラート)




 欧州連合(EU)の排出量取引制度は、30カ国の約1万2000の事業所や発電所のCO2排出量に上限を設け、上限を超えた分について排出権の購入を義務付けている。同制度はEUの温暖化対策で重要な役割を持つ。

 

 しかし欧州の鉱工業生産の落ち込みを受けて、排出上限に達しない企業が増えた結果、排出権の供給は数億トンにまで増えている。EUの暫定データによると、昨年の排出権市場で取引された排出権の規模は2%強減った。

 

 これに従って、価格も下がっている。排出量上限を突破した企業は現在、CO2排出1トンに対して約7ユーロ(約730円)程度支払っている。これは昨年同時期の価格と比べると60%安い。

 

 排出権獲得コストが低いということは、CO2を大気に排出するコストが低いことであり、電力会社に石炭の使用量を増やせる余地が出てくることを意味する。

 

 さらにロイター通信の調査によると、発電に伴う利益は、基準となるドイツの石炭火力発電所の発電する電力価格を基に算定すると、年初来約30%上昇し、2008年以来最高の水準にまで達している。ドイツの無煙炭燃焼火力発電所の発電量は前年比で13.5%増える可能性がある。

 

 ドイツの大手発電会社のトレーダーは「自社の発電設備に石炭を燃やすものがあれば、それが亜炭でも無煙炭でも、燃やせば高い利益率の恩恵を受けられるだろう」と述べた。

 

 実際、欧州最大の電力市場を持つドイツの電力会社各社は、今年初めから断続的に石炭火力発電所の利用を増やしている。ドイツ・ライプチヒの欧州エネルギー取引所(EEX)のデータによると、今年1~5月のドイツの日中の原子力と化石燃料による発電のうち、無煙炭と亜炭が占める比率は、53~68%に達している。

 

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012050900451