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国連気候変動枠組み条約事務局(UNFCCC)のエスピノサ事務局長、日本の改定NDC提出に対して、「感謝」と「懸念」を表明(RIEF)

2020-04-03 23:04:41

Espinosa2キャプチャ

 

 国連気候変動枠組み条約事務局長のパトリシア・エスピノサ氏は、日本政府が先週、パリ協定の国別対策貢献(NDC)目標の見直し案を提出したことに対して、NDCの改定案の提出を評価する一方で、「(日本から)もっと野心的な目標がいずれ示されると確信している」とのコメントをツィッターで表明した。

 

 日本の改定NDC目標は、2030年の削減目標について現行の「13年度比26%減」を変更せず、据え置くとしたうえで、「新たな削減目標の検討を、次回のパリ協定上の5年ごとの提出期限を待たずに実施する」との文言を入れた内容。http://rief-jp.org/blog/100859?ctid=33

 

 エスピノサ氏が、こうした日本の「改定NDC」に対して、一応、「Thank you Japan」と表現したのは、いくつかの理由がありそうだ。一つは、2月末をNDCsの再提出期限の締め切りとしていたのに、これまでに正式に改定目標を国連に提出した国は、マーシャル諸島共和国、スリナム、ノルウェー、モルドバの4カ国だけという実態だ。多くの国が国内調整に手間取っている。

 

Espinosa1キャプチャ

 

 さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響も大きい。改定NDCを議論する予定の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)自体が、11月開催の予定を来年に延期せざるを得ない状況になった。各国の関心が、中長期的な温暖化対策よりも、緊急のコロナ対策に向かうのは自然なことでもある。

 

 そうした中で、内容に新味がほとんどない日本の改定NDCでも、提出したことの労をねぎらった格好だ。ただ、エスピノサ氏のつぶやきの重点は、「Thank you」よりも、後段の「 I trust」以降だろう。

 

 日本政府の改定NDCでは 「現行の目標を確実に達成し、その後の新たな削減目標の検討は意欲的な数値を目指す」としている。一見、「野心的」な目標数値の引き上げを想定しているようにも読めるが、読み方によっては、2030年に現行目標を達成後、つまり2030年以降に「意欲的な数値」を設定するとも読める。

 

 「まさか」とは思うが、そうならないように、エスピノサ氏は「more ambitious targets will be set soon」とした。「soon」は近いうちということであり、5年後、ましてや10年後ではない。さらに「大胆で、野心的な気候行動だけが、持続可能な開発を達成する」とクギを刺している。日本政府が得意とする「小出し、先送り」方式ではなく、「大胆な、前倒し」方式こそが、求められていることを示している。

 

 緊急性が求められるコロナ対策でも、我が国政府の対応は、PCR検査の限定、集中治療室(ICU)や人工呼吸器不足なのに、増産のメドが全くない、緊急に安倍首相が決断したのが「布マスク2枚」の各戸配布、といった「小心で、首を傾げる政策」ばかりだ。「大胆、野心的」という言葉が、これほど似合わない国は、ちょっと見当たらないかもしれない。エスピノサ氏は、その点に懸念を抱いているのではないか。

https://twitter.com/PEspinosaC/status/1244853759064317952