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国際エネルギー機関(IEA)、今年の新規再エネ発電量、昨年比13%減と予測。2000年以来、マイナス成長は初。新型コロナウイルス感染の影響。来年も影響残る可能性(RIEF)

2020-05-22 21:21:18

IEA001キャプチャ

 

   国際エネルギー機関(IEA)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年の新規の再生可能エネルギー発電追加分が前年比13%減になるとの見通しをまとめた。コロナ感染の影響で建設が遅れたり、都市封鎖(lockdown)等で十分に人員確保できないことなどが要因。2000年以来、増加を続けてきた再エネ電力の伸びがマイナスに転じるのは初めて。2021年には回復が見込まれるが、それでも今年と21年を合わせた2年間の成長率は、当初のIEAの推計より10%低いという。

 

 IEAによると、今年の再エネ伸び率を当初の推計と比較すると、約20%の減少となる見込み。推計では、現在の各国の政策や市場動向の不透明さがもっとも影響が大きいとみている。FIT等での再エネ電力入札が先送りになったり、新規のファイナンスが見送りになるなどのケースもカウントされている。ただ、再エネ全体の発電容量全体は、昨年より6%拡大する見通し。

 

 一方、国別でみると、米国と中国は、ともに今年と来年とも一応、発電量の増大が予想される。中国の再エネ補助金の停止は今年中で、米国の税控除の期限も21年に設定されていることから、それまでに駆け込みの建設が進むとの期待がある。ただ、その後に大きく落ち込む可能性が見込まれるが、IEAは両国とも21年にも政策支援の継続や再調整をすると見込んでいる。

 

新型コロナウイルスの感染で再エネ発電も大きく減少
新型コロナウイルスの感染で再エネ発電も大きく減少

 

 建設工事の遅れでは、特に欧州での超大規模洋上風力発電等の大型事業が都市封鎖等の影響を顕著に受けている。しかし今後、人の移動の制限策の解除が次第に進んでくるとみられ、21年には新規の発電容量は前年比でもプラスに転じるとみられる。ただ、国別ではドイツやフランスでは、引き続き政策の不透明さが続くほか、スペインで建設が進んでいる大規模な再エネ事業はさらに遅れる見通しとしている。

 

 再エネの種別でも、これまで欧州等の先進国の太陽光市場で成長が著しい分散型太陽光発電市場も、回復の動きはゆっくりとしか進まない。また21年になっても19年の水準に回復しない可能性もあるとしている。そうなると、家庭や小規模発電事業者が投資判断を変える懸念もあると推測している。

 

 IEAの修正予測では、今年中に稼働するグローバルな再エネ発電の容量は167GW。そのうちほぼ半分は太陽光発電だが、昨年の太陽光発電の追加分110GWに比べ、約2割減の90GWでしかない。大規模再エネ事業は、21年には19年のスケールに戻る見通しだが、家庭等の分散型再エネ事業はダメージが大きく、来年になっても十分な回復は見込めないとしている。

 

各国の発電量推移
今年に入ってからの各国の再エネ発電量の推移

 

 再エネ市場が急拡大してきたインドは、大規模太陽光発電事業と分散型太陽光事業の両方において重要な役割を果たしている事業者の財務的リスクが、コロナの影響で悪化している。さらに国による都市封鎖策も厳しく導入されたことの影響で、今年の同国での新規再エネ事業は太陽光だけでなく、風力発電も大きく遅延するとみている。

 

 アフリカや中南米、ユーラシア地域でも同様に、コロナ後の経済回復の遅れから、すでに複数の再エネ事業計画が、21年以降に先送りされているケースが多い。これらの3地域すべてで再エネ事業は成長鈍化が続いていく、とみている。

 

 バイオ燃料生産も今年は輸送用で13%の減少の見通しで、エタノール生産は15%の削減、バイオディーゼルも同じく15%減、水素化植物油(HVO)は6%減などといずれも生産減の見通しだ。

https://www.iea.org/reports/renewable-energy-market-update/covid-19-impact-on-renewable-energy-growth