HOME |南極で、2月の「赤い雪氷」に続いて、今度は「緑の雪氷」が広がる。温暖化の進行で緑藻が大量発生。大気中のCO2吸収に貢献するも、雪氷の溶融で海面上昇加速の懸念も(RIEF) |

南極で、2月の「赤い雪氷」に続いて、今度は「緑の雪氷」が広がる。温暖化の進行で緑藻が大量発生。大気中のCO2吸収に貢献するも、雪氷の溶融で海面上昇加速の懸念も(RIEF)

2020-05-24 14:40:02

green03キャプチャ

 

 この冬(南極では夏)、記録的な高温を記録した南極で、雪氷が赤い色素を持つ藻類の大量発生で血の色のような赤色に覆われる現象が広がったことを2月に伝えたが、今度は、緑色の雪氷が広がっていることが報告された。英ケンブリッジ大学と英南極調査所(BAS)の研究チームによる。「緑の雪氷」は、温暖化の影響で雪氷中の藻が急繁殖したとみられる。赤色やオレンジ色の藻も新たに確認されている。

 

 赤い雪氷に続いて、緑の雪氷の出現に、「赤いタヌキに、緑のキツネ」という、かつてのCMを思い出した人がいるかもしれない。調査はケンブリッジ大のMatt Davey博士らが行い、 科学誌Nature Communicationsに論文を掲載した。

 

研究チームのMad Davis博士
研究チームのMatt Davey博士

 

 衛星画像と地上観測を組み合わせた調査の結果、雪上で緑藻類が大量に繁殖している独立した領域が南極半島全体で1600か所以上、総表面積は1.9㎢に及んだ。藻類繁殖領域の約60%はペンギンのコロニー(営巣地)から5km以内に存在していることから、ペンギンのふん等が藻類の肥料になっているとみられる。

 

 地域によっては赤色の藻やオレンジ色の藻も再び観測された。2月に南極のウクライナ基地で発見された赤色藻の異常発生は、緑藻綱クラミドモナス目(もしくはオオヒゲマワリ目)に属する単細胞の鞭毛中からなる属だった。今回の緑藻はそれらの「親戚」みたいなものとみられる。http://rief-jp.org/ct12/99735

 

「ラズベリースノー」と呼ばれる「赤い藻」も再び見つかる
「ラズベリースノー」と呼ばれる「赤い藻」も再び見つかる

 

 Davey博士によると、「緑藻の繁殖は地球規模で見ると比較的小さいが、植物が非常に少ない南極では、この程度の植物資源でも極めて重要な意味を持つ」と指摘。南極半島の藻類全体では、自動車の平均的な移動約87万5000回分に相当する479㌧のCO2を吸収していると推計している。温暖化の進行で、さらに緑藻の繁殖は進みそうだ。

 

 雪氷が緑藻で覆われると、氷の溶解が促進され、溶解が進むと、さらに藻類の繁殖が増えるというサイクルで、南極の「緑化」が進行する可能性がある。

 

green12キャプチャ

 

 藻類の多くは、氷の中に存在し、地中に根を下ろしているわけではない。このため、南極大陸の低海抜の沿岸地域では、雪氷が溶けて消えると、藻類も流出するみられる。ただ、気温が上昇によって、海抜がより高い地域にある雪も軟化して溶融することから、藻類はそちらに移動、拡大していくとみられる。

 

 藻類は増大する大気中のCO2の吸収源になる一方で、海氷の溶融の進行は海面上昇が加速することを意味する。

 

https://metro.co.uk/2020/05/21/climate-change-turning-antarctica-green-12733112/