HOME8.温暖化・気候変動 |2018年のEUの温室効果ガス削減率2.1%減。90年比ではほぼ4分の1の削減達成。一人当たり排出量も8.9㌧で、日本人の9.8㌧より1㌧以上多く削減。日本の排出努力不足鮮明に(RIEF) |

2018年のEUの温室効果ガス削減率2.1%減。90年比ではほぼ4分の1の削減達成。一人当たり排出量も8.9㌧で、日本人の9.8㌧より1㌧以上多く削減。日本の排出努力不足鮮明に(RIEF)

2020-06-01 16:53:44

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 EUは2018年の温室効果ガス排出量が前年比2.1%減の43億9200億㌧だったと公表した。京都議定書の基準年(1990年)からは23.2%の削減。EU市民一人当たりの排出量は8.9㌧で、日本の9.8㌧より約1割少ない計算になる。EUが温室効果ガス削減で先行しているとみるべきか、日本が遅れているとみるべきか。

 

 EUの公表データには英国とアイスランドの排出量も合計されている。それによると、2018年の域内全体の排出量は43億9200万㌧(CO2換算)で、基準年の1990年の56億5900万㌧から12億6700万㌧削減した。土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)分野での排出・吸収量と国際航空の排出量を除外すると、削減量は90年比で4分の1となる(14億2500万㌧)。

 

EUの1990年から2018年までのGHG排出量の推移
EUの1990年から2018年までのGHG排出量の推移

 

 一方、EUは90年からの28年間でGDP伸び率が60%を超えている。この間に25%のGHG削減を実現したわけで、EUは温暖化対策と経済成長は明確にデカプリング(分離)されていると指摘している。同期間でもっともGHG排出量の削減量が大きかったのは、公共電力と熱供給で4億9700万㌧、次いで産業(鉄鋼業を除く)の2億4800万㌧、住宅用燃料使用1億3400万㌧だった。逆に、もっとも排出量が増加したのは道路輸送の1億7200万㌧、次いで冷房・空調部門の8600万㌧だった。

 

 公共電力と熱供給でのGHG排出削減量が多かったのは、旧来の化石燃料発電から再生可能エネルギー発電への転換が順調に進んでいることを示している。18年の排出削減量でも、公共電力と熱供給は6500万㌧の削減で、年間の削減量の6割を熱発電部門でのクリーン化で実現している。石炭火力発電からのCO2排出量は約5000㌧削減した。

 

 国別でもっとも排出量が多かったのは、ドイツ(8億5800万㌧)。前年比4.0%減、90年比31.3%減。次いで英国(4億6200万㌧)の同2.0%減、41.8%減、フランス(4億4480万㌧)、同4.0%減、18.9%減、となっている。

 

EUの国別GHG排出量の概要
EUの国別GHG排出量の概要

 

 削減状況が芳しくない国は、前年度比ではラトビアが前年比4.4%増、ルクセンブルク3.0%増、マルタ1.4%増、スロベニア0.8%増。90年比ではキプロス55.0%増、スペイン15.5%増、ポーランド15.0%増、アイルランド9.9%増など。

 

 道路輸送からのGHG排出量は最大となっているが、17年まで4年連続増加の基調が18年は安定的になっている。また経済1ユーロ当たりのCO2排出量は90年の582gから、18年は277gへと半減している。

 

 日本のGHG排出量は2018年度で前年度比3.9%減の12億4000万㌧。13年度以来、5年連続で低下している。ただ、90年比では、EUが4分の1の削減を達成しているのに対して、日本は2.8%減でしかない。日本人一人当たり排出量も9.8㌧で、EU市民よりも1㌧近く多い。ただ、順調なEUの排出削減ピッチでも、パリ協定で目標としている「2.0℃目標」の達成には届かない。環境NGOらは、年間の削減率を7%台に加速する必要があると指摘している。http://rief-jp.org/ct8/101363

https://www.eea.europa.eu/publications/trends-and-drivers-of-eu-ghg