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新型コロナウイルス感染拡大によるCO2排出量の減少急速に縮小。一時の前年同期比17%減が、各国のロックダウン解除で直近は5%減に。「グリーンリカバリー策」の必要性高まる(RIEF)

2020-06-12 22:16:18

CO2003キャプチャ

 

    新型コロナウイルス感染拡大で、世界的に急減したCO2の排出量が、各国でのロックダウン解除の広がりを受け、再び排出量を高めている。4月の初めに前年比平均17%減を記録したが、6月初めの排出量は同5%減にまで戻っている。このままだと年間を通しても同4%減にとどまり、来年はプラスに転じるとみられる。コロナの影響から経済社会が回復することは望ましいが、回復のパターンが従来型のままだと、パリ協定が目指す目標の達成は遠のくばかりだ。各国政府が景気回復先をグリーンリカバリー策に切り替えて展開できるかどうかが問われている。

 

 (上図は、コロナ対策のロックダウン策の強度に応じたCO2排出量の変化)

 

 英イーストアングリア大学の研究チームが5月半ばに分析した推計値では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、工場等の操業停止、人の移動の制限等がグローバルに展開、4月初めまでの世界のCO2排出量が前年同期比で平均17%減少した。ピーク時には平均26%減にまで減った。年間の削減見通しは平均4%減(最大7%減)としていた。http://rief-jp.org/ct8/102578?ctid=70

 

4月初めのグローバルなCO2排出量
4月5日のグローバルなCO2排出量

 

 ところが、6月上旬の段階で、CO2排出量はわずかに前年比5%減を切る水準にまで戻っている。欧州を中心にロックダウン解除が広がり、景気回復に向けた政策支援等も始まっていることなどが、排出量の減少が急速に縮小しているという。同大学の気候変動学のCorinne Le Quéré教授は「まだ非常事態が続いている国もあるが、事態は非常に急速に動いている」と指摘する。

 

 同大によると、年初から今月11日までのCO2総排出量は前年同期比8.6%減で4月時点の17%減から半分ほどに減っている。このままのテンポが続くと、年間では前年比4%~7%減の間になりそうという。7%減は6月までに感染の第二波が生じる場合としている。

 

4月5日のグローバルなCO2排出量
6月11日のグローバルなCO2排出量

 

 排出量減少がもっとも大きかったのは自動車移動の減少による道路輸送部門だった。各国で「ステイホーム」政策がとられたため、自動車等での外出が急減したことが大きい。しかし、ロックダウン政策の解除とともに、人々が公共輸送機関を避ける形での外出手段として自動車利用を増やしていることが、CO2排出量リバウンドの大きな要因になっているとみられる。自動車からのCO2排出量はコロナ感染拡大前よりも増えているとみられる。

 

 EUの大気汚染排出量自体は、CO2ほどには急速に回復していないという。窒素酸化物(Nox)やPM等の排出量の増大はみられていない。EUの「Copernicus Atmosphere Monitoring Service」では気象条件等の多様な要因が影響しているとみられる。

 

 英国のLondon School of Economics(LSE)グランサムリサーチセンターのBob Ward氏は「ロックダウン後、人々が地下鉄等の公共交通機関を避けて、自家用車利用を拡大している。このままだとCO2排出量はむしろ従来以上に増大する。経済回復策は目先の対応ではなく、将来のカーボンフューチャーを目指したゼロカーボン対策に集中するべきだ」と警告している。

 

 Corinne Le Quéré教授は「CO2排出量削減の期待は完全に消えたわけではない」と指摘する。各国政府が回復策をグリーンリカバリーとし、たとえば電気自動車普及のための充電ステーションの設置を拡充し、ビルの省エネ化の促進、再エネ事業の強化、植林の増大等、CO2削減と雇用対策の両方に効果のある政策を優先的に実施することを求めている。