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欧州航空安全機関(EASA)、初の電動航空機に型式認定付与。スロベニアのPipistrel社。2人乗り。パイロット養成用に商業化(RIEF)

2020-06-15 08:42:21

 

 欧州航空安全機関(EASA)は先週、電動バッテリーで空を飛ぶ電気航空機に、世界で初めて公式の飛行許可を付与した。スロベニアに拠点を持つPipistrel社が開発した「Velis Electro」に型式認定を与えた。電気航空機は目下、世界中で開発競争が進んでいるが、Pipistrel社が大きく一歩を踏み出したことになる。

 

 型式認定を受けたPipistrelのVelis Electroは2人乗りで、フル充電で80分の飛行が可能。搭載する2つのバッテリーパックで600kgまでの重さを飛行させることができるという。パイロットの訓練用に開発した。充電時間は40分~70分。機体は一人で押して格納庫から滑走路に移動させることができるほど軽い。

 

2個の電動バッテリーで空を飛ぶ

2個の電動バッテリーで空を飛ぶ

 

 Pipistrel社の創業者でCEOのIvo Boscarol氏は「これは世界で最初の電気航空機の商業利用の第一歩だ。CO2フリー(無し)の飛行を現実化し、他のどの飛行機よりも騒音が少なく静かで、排気ガスを一切出さない。電動エンジンは航空機本体と別に型式認定されたので、他の航空機にも搭載可能。他の航空機デザイナーにも使ってもらいたい」と述べている。

 

 EASAの代表のPatrick Ky氏も「素晴らしい躍進だ。Pipistrelは 今後、われわれが承認していく多くの『e-plane』の第一号だ。航空機の持続可能性を改善し、騒音と廃棄量を削減するための新技術が飛び立った」と評価している。EASAはPipistrelと3年間の共同開発を続けてきた。

 

一人でも移動させることが可能。軽くて安全
一人でも移動させることが可能。軽くて安全

 

 Pipistrelはすでに今年中に7カ国から31機のVelis Electroの注文を受注しているという。営業担当のMr Marc B. Corpataux氏によると、 その多くがパイロット養成学校等。スイスのAlpinAirPlanes GmbH社はこれまでも、Pipistrelの練習機(Alpha Electro)を導入している。Velis Electroについても今年中に10空港で12機を導入する予定としている。AlpinAirPlanesの空港では、建物の屋上に太陽光発電設備を150㎡設置して充電用の電力を確保する予定という。

 

 電気航空機の開発は欧米で競い合って進んでいる。フランス政府は先ごろ、15億ユーロの研究開発費を含めて150億ユーロ(約1兆8000億円)を投じて、電気航空機開発促進を発表している。計画には欧州最大のAirbusも参加、電気航空機の大型化、電源の多様化等を目指すとしている。

 

electrticplane001キャプチャ

 

 米国では先月末、電気で駆動する初の9人乗り航空機のデモ飛行に成功した。米国のスタートアップ会社のMagniXが開発したもので、米ワシントン州のモーゼス湖上空を30分間飛行した。9人乗りという「大型機」の飛行成功は初めて。https://rief-jp.org/ct12/103036

 

 中国ではドローン技術を活用して、2人の乗客を乗せることができる「空飛ぶタクシー」のデモンストレーションに成功した。電動バッテリーで時速100kmで飛行可能という。日本ではどうか。

 

 「モノづくり大国」とのキャッチフレーズはこの分野ではあまり聞こえてこない。また欧米中に差をつけられるのか。経産省は、コロナ対策の給付金事業等で杜撰な事業発注を実施し、世間の顰蹙を買っているが、身を正して、本来の産業技術開発支援に取り組んでもらいたい。

 

https://www.easa.europa.eu/newsroom-and-events/press-releases/easa-certifies-electric-aircraft-first-type-certification-fully

https://www.pipistrel-aircraft.com/pipistrel-obtains-first-ever-type-certificate-in-the-world-for-an-electric-aeroplane-from-easa/