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ユニリーバ、2039年までに全製品のネットゼロ達成をグローバル目標に。10億ユーロの「気候自然ファンド」設立。2023年までに「森林破壊フリー(無し)サプライチェーン」達成(RIEF)

2020-06-16 08:28:27

unilever002キャプチャ

 

  グローバルな消費財大手のユニリーバは、同社が供給するすべての製品について、2039年までにCO2ネットゼロを実現することを宣言した。EU等では2050年ネットゼロを目標とする方向だが、それを10年以上前倒し達成を目指す。気候変動対策を加速させるため、10億ユーロ(約1800億円)の「気候自然ファンド(Climate & Nature Fund)」を立ち上げる。

 

 同社のCEOのAlan Jope氏は「世界は現在、新型コロナウイルス感染拡大対策や、『黒人の命も大切(Black Lives Matter)』抗議による社会の不公平課題の提起が起きている。これらはいずれも大事な課題だが、同時にわれわれすべてを脅かしている気候危機を忘れるわけにはいかない」と指摘。改めて気候対策に積極的に取り組む決意を示している。

 

 ユニリーバは、オランダと英国に拠点を置き、食品から洗剤、ヘアケア、トイレタリーなどの家庭用品を世界180カ国以上で製造・販売している。

 

自然を守る原点に立つ
自然を守る原点に立つ

 

 今回の気候変動プログラムでは、ユニリーバグループの各製品の素材を提供する森林、土壌、生物多様性等を守り、破壊から回復させる取り組みを、各国の農業従事者や小規模事業者らのサプライチェーンを巻き込んで進めていくとしている。さらに水ストレス(水不足)地域のコミュニティへの水資源アクセスを改善するために、各国政府や多様なステークホルダーとも連携する。

 

 具体的な対策を実現するために立ち上げる10億ユーロのファンドは今後10年の間に、景観の回復や森林再生、森林によるカーボン吸収力の増加、野生動物保護、水資源保全等を含めて、気候対策と自然保護対応に投じられる。ユニリーバグループではすでに多様な気候変動や自然保全対策を実施しており、今回の対策は、それらに追加する形で展開する。

 

 たとえば、米国のアイスクリームチェーンのベン&ジェリーズブランドでは、原料となる酪農場からの温室効果ガス排出量を削減する「Ben & Jerry’s Initiative」を展開している。また、環境に優しいクリーニング、紙、パーソナルケア製品を販売する米企業の「Seventh Generation」はクリーンエネルギー推進キャンペーンを行っている。 ユニリーバ最大ブランドのクノールは仕入れ先の農業者と連携し、よりサステナブルな食品育成キャンペーンを実施している。

 

コミュニティの水不足を改善することで工場の水資源管理力も向上
コミュニティの水不足を改善することで工場の水資源管理力も向上

 

 ユニリーバはこれまで、グループのバリューチェーン全体で生じるカーボンフットプリントを2030年までに半減させる目標を掲げてきた。今回の方針は気候危機の規模の大きさと緊急性の増大に対応するもので、2039年までにすべての製品からのCO2排出量をネットゼロとする。ネットゼロは、グループで使用する原料の資源から、店頭に並ぶ一つひとつの製品にまで適用する。

 

 パリ協定が目指す2050年の目標より11年前倒ししたネットゼロ目標を設定した理由について、同社では「バリューチェーン全体のサプライヤー等のパートナーとの協力によって達成する」と説明している。グローバルに展開する各サプライヤー企業の選定でも、自ら科学ベース目標(SBT)を設けている事業者をパートナーとして選ぶことを進めるとしている。

 

 現在、食品・日用品等に使用する森林関連商品のうち、89%はすでに持続可能性を保証する認証基準を満たしているという。しかし世界中で問題視される森林破壊を終了させるためには、より高い基準を設定する必要がある、として、2023年までに「森林破壊フリー(無し)サプライチェーン」の達成目標を掲げた。目標達成のために、衛星モニターやブロックチェーン等のデジタル技術を活用して、原料のトレーサービリティ(追跡可能性)と透明性の向上を確保するとしている。

 

 水資源保全にも力を入れる。国連によると、すでに世界人口の40%は水不足に直面しており、21億人以上が飲料に適さない水を飲まざるを得ない状況にある。ユニリーバは2030年までに世界100地域のローカルコミュニティで「ウォータースチュワードシップ・プログラム」を実践する。同プログラムのモデルとしては、ユニリーバがインドで実践してきた「Probhat プログラム」を据え、その経験を全世界に拡大する方針という。

 

 インドのプログラムでは、ユニリーバの工場が立地するコミュニティで実践してきた。工場で使用する水資源の品質と供給リスクを改善するうえで、工場分だけでなく、コミュニティ全体の水資源マネジメントを改善したほか、収穫シーズンだけ農民を支援するのではなく、常時、地域全体の人々が水資源に十分にかつ容易にアクセスできるよう、地域のステークホルダーとパートナー関係を結んで対応してきたという。

 

 企業がコミュニティに入っていき、コミュニティの問題解決をすることで、そこで立地する工場の問題も解決するというアプローチだ。こうした「スチュワードシッププログラム」を展開するうえで、世界銀行が整備するマルチステークホルダープラットフォームである「2030年Water Resources Group」にも参加し、多様なステークホルダーと協働する。

https://www.unilever.com/news/press-releases/2020/unilever-sets-out-new-actions-to-fight-climate-change-and-protect-and-regenerate-nature-to-preserve-resources-for-future-generations.html